松原慶太

愛しのタチアナの松原慶太のレビュー・感想・評価

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)
3.2
1時間ほどの中編。カウリスマキのなかでは平凡なほうの作だとは思う。例によって音楽の趣味だけは無駄に良い。しかし最後のほうでは、なぜかこころが温かくなっていた。

例によって、さいしょは何の話なのかもわからず、ただ画面だけをボンヤリと追う。そのうち、冴えない中年男ふたりと、冴えない中年女ふたりのロードムービーだとわかる。

ロードムービーっぽいハプニングとかエピソードは何もない。四人はクルマに乗って港へと向かう。殺風景なレストランに入って、黙ってコーヒーと酒を飲み、黙って出てくる。

二組のカップルに分かれてホテルの部屋に泊まる。女はなにかを期待しているようでもあるが、男は何もしないで服を着たまま寝てしまう。翌朝起きて、またクルマに乗る。そんなことをくりかえしているうちに、四人は港に着く。

なぜ、なにも起こらないカウリスマキの映画を見ると、ほっこりと温かくなるのか。それは、人生なんて案外こんなふうなんだよ、ドラマチックなドラマなんて、なくてもぜんぜん大丈夫なんだよ、と僕たちが気付くからなのかもしれない。