JAmmyWAng

エイリアン/ディレクターズ・カットのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

4.6
SFホラーとしての非凡なアイデアとスリリングなアプローチが静謐に展開されながら、エイリアンの造形によって圧倒的大勝利が確定するアレ。

このビッグチャップというヤツは、男性器のモチーフによる意味的な役割もさることながら、宇宙船内における機械的な設備としての剥き出しの配線やチューブなどという、インフラとしてのハードウェアに対する擬態性を有しているワケで、ギーガーのバイオメカニクスとはつまりこういう事かと。

それによって本来無機質である無骨な物体やその集合体である背景が、不気味な有機的性質を獲得し始めてしまうという有り様で、画面全体が継続してある種の緊張感と潤いを帯びているように感じられるのであります。

そしてバイオメカニクスにおける擬態性によってナチュラルな認識に植え付けられたその造形は、なんなら想像という行為を通して現実世界へも平気で延長してくるワケで、もしかしたらその辺にいるんじゃないかと身構えてしまうような存在感としてのリアリティがあると僕は思うのです。

エイリアンの存在に船員たちは神経がキリキリしているだろうに、猫を呼ぶときはちゃんと可愛くkitty kittyするというネコレアリズモ的な描写も大変素晴らしい。

「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」のかもしれないけど、宇宙においても"Here kitty, kitty, kitty, ミャ~オ"は猫には届くのである。人類に希望は、残されている。
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