まぬままおま

天使の涙のまぬままおまのレビュー・感想・評価

天使の涙(1995年製作の映画)
4.0
ウォン・カーウァイ監督作品。

お洒落恋愛映画。

定職にもつかず不安定な未来しかない若者たち。彼らの恋愛は刹那的で劇的で、だから脆くもある。それは美しいとともに暗澹たる未来が予見されてやまない。

移ろいやすさは香港の政治的な情勢にも言えることである。
この若者の恋愛が、社会的なものと密接し、それをスタイリッシュに描いていることが、ウォン・カーウァイ作品の特徴であり、好きなところである。
例えば本作で登場する青年が話せなくなった原因は、賞味期限切れのパイン缶を食べたことである。このパイン缶は『恋する惑星』にも登場する重要な物であり、缶詰で時限的なことは2046年で一国二制度が失われる(かもしれない)香港をも暗に意味している。

ウォン・カーウァイ作品はインテリぶってることを批判されがちである。
だけど恋愛を問うことは、恋愛のある社会を問うことだと思うし、若者の心の悩みのみを扱った恋愛映画よりずっと面白いと思っている。
今後もウォン・カーウァイ作品をみていきたい。

蛇足1
銃撃シーンで、血が噴き出たり札束が舞ったりしてすごい。

蛇足2
殺し屋に恋愛感情を持ってしまったエージェントが彼を思ってオナニーするのと、殺し屋と刹那的に出会った金髪の女が性愛を営む、この対比がとてもいい。別れた男に執着する女と話せない青年のバイクのシーンもいい。