囚人13号

モレク神の囚人13号のレビュー・感想・評価

モレク神(1999年製作の映画)
3.5
『独裁者たちのとき』まで変わらず、威光を感じない権力者と無時間性の映画だった。
ヒトラーと愛人の公然不倫、皆が彼に媚びる様子を延々と見せられ、朝か夜かも分からない霞んだ空間で女がオリンピアの如く器械運動を披露しても時間感覚が削ぎ落とされているため(場所も相まって)まるで冥界のよう。

あとソクーロフ映画においては傍観者というか光景を俯瞰から眺める者の視点が度々登場する。覗き見たりするのも然り『独裁者たちのとき』では扉の向こうから何か気持ち悪い巨人みたいなのが見ていたが、統治者を監視する"目"は悉く冷たい。
ハエの生命力を力説しながらハエにたかられてるヒトラーは死臭が感じられて面白かったが、『牡牛座レーニンの肖像』との差異は主人公に隣接した"死"との概念的な距離のみならずそれを享受せんとする雰囲気、結局はソクーロフ自身のヒトラー/レーニン/昭和天皇に対する見識というかそこから見出す美学である。

あと俳優の喋り方とかは三部作全てに言えることだがめちゃくちゃ完成度高い。特にヒトラーなんか『ジョジョ・ラビット』の2兆倍ヒトラー。
囚人13号

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