Kadoyan

破戒のKadoyanのレビュー・感想・評価

破戒(1962年製作の映画)
4.0
今尚色褪せる事ない大作でした。
部落民を非難し自らの優位性を保つ社会的風土感の中で、自らが部落民であるという戒律を背負いながら生きていく人々の圧倒的な辛さを感じた。
また同時に、生き抜く事に対する女性の強さと男性の脆さが印象的でした。
息苦しさから理不尽な秩序に対して反発し声を上げようとするも、同調圧力に屈服し、勇気が出ず、自身の戒律の重さにも耐えきれずに沈んでいく主人公の姿は時代を越えて尚、通じる世界があると思う。
またその戒律のなかでも、希望を捨てずに一人間として胸を張って生きていこうとする女性達に、男達が勇気付けられていく様は、時代を越えて通じるものがあると思う。
差別主義者は、自分達の安堵感の裏に隠された同調圧力という名の暴力に対しての恐怖心があること。
また、差別意識は実のところ、社会的地位の維持のためにしか過ぎず、理不尽であるという事実を内面では認めていること。
この映画は、普遍的なそれらの意識を顕在化させる力があると思う。
差別主義者もその犠牲者も、時代を越えて、この映画から自身の戒律を「破戒」して欲しいと思う映画でした。
Kadoyan

Kadoyan