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愛を読むひとのkouのレビュー・感想・評価

愛を読むひと(2008年製作の映画)
3.5
《罪》
スティーブン・ダルドリー監督、ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞主演女優賞を受賞した作品。心情を描いた作品であり、言葉や行動が全て理論的ではないということもあるため、作品を見ている間常に登場人物の心を考えさせられる映画だった。それ故に映画を見たときの感想が人によって変わる映画だと思う。

第二次世界大戦後のドイツで、15歳のマイケルは自分を助けてくれたハンナ(ケイト・ウィンスレット)に恋をして、いつしか男女の関係を結ぶ。やがてハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、会う度に本を読んで聞かせるようになる。しかしある日、ハンナはマイケルの前から姿を消してしまう…というところまでが前半部分。

今作は2つの要素が絡んでいると思う。1つは若き頃の恋愛、というものが必ずしも甘く切ない思い出で終わらない、ということ。そして、自分の罪の意識に気づかない女性を愛した事から自分の人生が変わっていく、という事だ。

彼女自身が裁判で言っているように、彼女たちは自分達の与えられた役割のままに、それを実行したにすぎないのだ。それは物語の終盤、主人公とハンナが何十年ぶりに出会う場面の会話にも描かれている。そこにはなんの救いもないのだ。人は人を変えることが出来ないし、人を救うことも出来ない。そんな主人公の心には、どこか罪の意識があり、人生を変えるような出会いだったのだ。

ケイト・ウィンスレットの体を張った演技は勿論素晴らしく、その強さが魅力的だった。決して単純な恋愛映画のような、楽しい作品ではないが、考えさせられる映画だった。
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