とらキチ

ラストキング・オブ・スコットランドのとらキチのレビュー・感想・評価

3.9
アフリカの独裁者、イディ・アミン大統領政権下のウガンダを題材に、アミンに仕えたスコットランド人の白人青年医師の視点から描く。
今作のプロットでよく出来てるなぁと思ったのが、アミンは独裁者として50万人もの国民を大量虐殺し「黒いヒトラー」「アフリカで最も血にまみれた独裁者」と称された程の人物なんだけど、仮にも政治家として頂点に昇り詰めただけあって、ユーモア精神に溢れ人望もあった“ように”描いていたこと。演じるフォレスト・ウィテカー自身の魅力もあってか、特に気さくで親しみやすそうな面を強調していたように思う(でも目の奥は決して笑っていない)。だがそれも物語序盤までで、アジア人追放や経済苦境にはじまり、疑心暗鬼からの側近の粛正と次第に内に秘められていた傲慢で残酷な本性が明らかとなってくる、というこの流れがホント巧い。
アミンの主治医、のちに右腕となるスコットランド出身の青年ニコラスを演じたジェームズ・マカヴォイ。最近のクセ強な役柄しか見た事がなかったのだが、若かりし日の彼の姿はメチャイケメン。それでも思慮が足らず直情的で、人妻大好きなクズっぷり満載な役柄がとてもハマっていた。ジリアン・アンダーソンの「Xファイル」のスカリー役以外の役柄を見れたのがとても新鮮!
そして“アミン”というと、ある一定層の人達がつい思い浮かべてしまう“人食い大統領”という、実に俗で野蛮なイメージ(実際は菜食主義者だったらしい)に対しても、寝取られた妻の1人を惨殺し切断された腕と脚を逆さにくっつけられてたりする描写や、ニコラスの拷問の場面とかで、その期待に応えていたりしている。それにしてもあの描写は本当にエグかった!
終盤、幾度となく映画の題材にされてきた“サンダーボルト作戦”こと“エンテベ空港ハイジャック事件”が出てきたのにはビックリ。たしかにあの事件はアミン自身にとってもハイライトだったと言えるし、そこでこの事件を絡めてきますか!と感心してしまった。
ラスト、飛び立っていく航空機を見つめ、なんとも言えない哀愁を漂わせているアミンの姿がとても良かった。あの時彼は一体何を思っていたのだろうか。
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