つるみん

中国女のつるみんのレビュー・感想・評価

中国女(1967年製作の映画)
3.6
【マオ・マオ】

フランスで毛沢東主義を信奉する5人の若者たちの行き着く先は…。政治への傾斜を深めて行ったゴダールの力作。

映像記録のような撮り方で、その場で起こっている事をそのままダイレクトに伝える説得力に加え、色彩豊かな背景を見せる事により〝映画〟として成り立っている。

確かにこれを〝作品〟として判断するのは難しい。むしろ伝える為の手段として映像を選んだと言っても過言ではない。そもそも今まであった映画というものを脱構築し、世に出したのだから、それだけでも凄まじい事。自分の作品として、自分のキャリアとして、ゴダール自身はこの作品をどう位置づけるのか。

後半に差し掛かりゴダール色が一気に加速する。正直、前半から中盤にかけてのダラダラした演説は自分にとっては退屈でしかなかった。しかしヴィアゼムスキーと教授の電車内で繰り広げられる討論から一気に引き込まれた。第三者の意見の介入により衝突し、自分の考えを押し通しながらも、どこか後戻りできない状態となってムキになる若さ。

長い映画の歴史で見たらやはりゴダールは時代の映画監督である。観念的な極左の限界を見通し、それを映画として映像化する監督なんて他にいただろうか…。凄いという言葉しか出てこない。
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