Mikiyoshi1986

中国女のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

中国女(1967年製作の映画)
3.9
5月14日は昨年逝去された女優アンヌ・ヴィアゼムスキーのお誕生日。
存命ならば今日で71歳に。

ロベール・ブレッソン監督『バルタザールどこへ行く』でスクリーンデビューを果たし、
次なる主演作『中国女』ではのちにパートナーとなる監督ゴダールと運命的な出会いをしたアンヌ。
以後、前妻アンナ・カリーナに代わるゴダール第二のミューズとして、彼の左傾化時代を象徴的に支えました。

当時、実際に19歳のパリ大学生だったアンヌが主人公の女子大生ヴェロニク役を演じ、マオイズムに傾倒していくフランスの若者たちを描いた本作。

フランス戦後世代の意識高い若者たちは、
初等教育でみっちりナチスの帝国主義を憎み、
8年間に及ぶ不毛なアルジェリア独立戦争及びインドシナ戦争を傍観してその虚無を知り、
そして資本至上大国アメリカが今ベトナム戦争で再び侵している過ちに対し、俺達若者が何かしらのアクションを起こして新しい時代を創らなくては!と、使命感に駆られていた時代。

そんな熱気が徐々に高まりつつある67年当時のフランスは、まさに68年に巻き起こる「五月革命」への前段階に突入しており、
ゴダールは本作において、世界に派生する学生運動の機運を見事に予言した作品と認知されています。

更にその予言は、労働経験すら無く机上の空論で一端に弁舌を振るう学生ちゃんの未熟さをしっかり描いている点もまたしかり。
しかしその敗北までも予見したゴダールは商業映画と決別し、敢えてアンヌと共に棘の道を歩むことになるのでした。

そんなアンヌの自伝を映画化した作品『グッバイ・ゴダール!/Redoutable』が、いよいよ7月に本邦初公開されます!楽しみ!
ゴダールも只今絶賛開催中のカンヌ国際映画祭で大健闘してるし、彼の"映画史"はまだまだ更新され続けてゆくことでしょう。
Mikiyoshi1986

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