KANA

中国女のKANAのレビュー・感想・評価

中国女(1967年製作の映画)
3.7

学生の時ゴダールにハマった流れで訳もわからず観て以来の再鑑賞。
やっぱりアンヌ・ヴィアゼムスキーといえばコレなので、無性〜にまた観たくなり。

五月革命前夜、1967年のパリ。
ソルボンヌ大学の学生5人が、ヴァカンスに出かけた知人のアパルトマンを借り、共同生活をしながらひと夏を毛沢東思想の学習に費やす…

決してメッセージ性の強い生真面目な政治映画ではなく、ゴダールのポップアートを楽しむ作品と割り切っていいと思う。

『女は女である』や『気狂いピエロ』を彷彿とさせる、原色を多用した色彩の氾濫。
どこを切り取ってもオシャレポスターになる!
Blu-ray特典映像にあった助監督のインタビューによると、ゴダールの思いつきの指示で壁のペンキはわざと完全に塗り切らないままにしたそう。(助監督曰く、思想が移ろいやすい若者を投影した「中途半端の美」)
そこかしこにある赤いハンディーな『毛沢東語録』がアートのアクセントになってるし、
黒板に書くパステルカラーのチョークの文字も可愛い〜。

ジャン=ピエール・レオがいろんな国の国旗のデザインをかけたり、ジュリエット・ベルトがベトナムの寸劇をしたり、ベランダでみんなで毛沢東体操をしたり、、断片的な映像と、耳について離れない「マオ、マオ〜♪」の音楽で、完全に右脳が喜ぶ仕様になってる。

マルクス=レーニン主義や毛沢東主義などを熱く語る彼らのセリフの洪水は、なんだかさらに詩的に持って回った感じで小難しく聞こえるようにしてて、ゴダールのスノッブさが見え隠れする。
でも左脳はもはや置いてきぼり。笑
ただお子ちゃま達の革命ごっことはいえ、テロの計画やまさかの実行というのは今考えると恐ろしい…

アンヌはというと、ほぼ笑わず、タバコを燻らしながら彼女特有の魅惑的な三白眼で時に熱く語ったり、芯の強いキャラクター。
列車の中で教授と長〜い議論を交わしてる時も意志の強さを感じさせつつ、表情や仕草がアンニュイ。
当時のゴダールとの恋仲は『グッバイ、ゴダール!』で描かれた通り。
なので車窓の取手を始終こねくり回してるエロティックな仕草は意味深。。

斬新なのに退屈、退屈なのに斬新。
でも決して嫌いじゃない。むしろベクトルの向きは好きの方。
マオイズムという政治的題材まで自分のファッションにしてしまったゴダール、恐るべし。
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