すずき

エターナル・サンシャインのすずきのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
4.7
―その日の目覚めは最悪だった。
まるで寝ている僕の横で悪魔が二人飛び跳ねているような、或いは長い悪夢を見ていた後のような、そんな気分だ。どんな夢だったか、忘れてしまったが。
おまけにマイカーに覚えのない大きな傷が就いている、おそらくお隣さんの車だろう。
そんな朝だったせいか、僕は突発的に会社とは逆方向の電車に飛び乗り、冬の海にまで来てしまった。
そこで僕はクレメンタインと出会った。
彼女は初対面でもまるで恋人のように、人の心にグイグイ押し入ってくるような女性だったが、僕はそんな所が気に入った…

なんとなく、あらすじを一人称視点で。
この映画、非常にネタバレに触れずに語るのが難しい。
未見だけど興味のある方は、レビュー読んでないでさっさと見ろ!な映画です。
男性にも、女性にもオススメ。カップルにはもっとオススメ。ファミリーにはススメない。

クレメンタインとの出会いを描くオープニング15分、そこは普通の恋愛映画みたいで、とっても普通。
だけど、彼女をアパートまで送った後に事件は起こる。
その事件とは、「唐突にモブが話しかけてくる」。
現実では日常的な事だけど、映画の中では何故か強烈な違和感を与えるその演出の切れ味!実にいいパンチを喰らいました。
そして返す刀で暗転、場面転換で一人で泣く主人公をバックにタイトルコール、とコンボを決める!

つかみはバッチリなオープニング、しかしその後の展開は、時系列と、現実と記憶がシャッフルされたような構成。
それまでが普通だったために、この変化球は刺さる!
一見難解だけど、見ているうちに理解できるように、自然にエスコートする手際も見事。

この映画の核となってるのは、現実世界には無い「ある医療技術」。
つまりこの映画、恋愛映画なんだけど、記憶をテーマにしたSF映画でもある。
テーマはきっちり恋愛してるのに、SF的味付けなので、男性でもしっかり楽しめるハズ。

「記憶の中の世界」で、主人公が出会うのは、彼が記憶している幾場面ものクレメンタイン。
「自分の記憶」である彼女は、つまりは自分自身なんだけど、自我を持っているように主人公と会話する。
エヴァの最終回みたい。

展開としては起→承→転→結→転→結と、記憶世界と現実世界とで、クライマックスが二度ある構成。
2回目の転では、少し蛇足感も感じたけど、最後まで見ると全て必要な部分だった。
確かに1回目の結で終わってしまうと、薄っぺらいし、その後の事を考えると疑問が残る。

ラストシーンの、また話が拗れてきた所での、主人公の一言、それに対するクレメンタインの一言が最高!
たった一言で解決してしまう、その魔法のような一言は、すごく優しくて、グッとくる。
「愛する事」のすべてが表現されているベスト会話だ!

しかし日本語版ポスターちゃんさぁ、ちょっとダサすぎへん?
ピンクを基調にしてキスシーンとか、薄っぺらすぎへん?
「エターナル」と「サンシャイン」の間に「★」入れる「つのだ★ひろ」みたいなセンス、クソダサすぎへん?