まりぃくりすてぃ

タレンタイム〜優しい歌のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
5.0
なぜか最初の一分でもう泣いた。

最初にドビュッシー弾くピアノを聞かされ建物の廊下か何かの風景を見せられて、まだ人物も出てきていないうちから、私の涙はジワーッと準備されてしまった。どうしてだろう? スクリーンの中に、不思議な優しさが漂っていたのだろうか。
そしてわずかその数十秒後には、笑わされていた私。(変な男子生徒が映ったことで。)
映画の終わりまでに、(何度となくクスッとさせられるとともに)泣きっぱなしで呼吸は苦しいし、顔など大変なことになってしまったのだが…………

ストーリーがまったく始まらないうちに私が泣かされ始めた本当のわけは、あえてやっぱりいえば、「この映画の縁(ふち)からもう、愛が溢れていたから」かもしれない。
男女の恋愛が軸の一つだけれど、そんな特定の一つ二つの愛じゃない。親子の愛、それに友情やきょうだい間の思いやり、他人同士のちょっとした声がけや気づかいや軽口や先生の一言、それら人間同士のもろもろが、大小や強弱に違いはあっても一つ残らず愛だなと自然に思えた。「優しさ」とか「友情」とか「和解」とか「調和」とか呼ぶよりも、「愛」。まるで愛だけで出来ている映画。
ヒロインたちの恋愛も、「恋」なんか突き抜けて、最初から「愛」と呼べる精神性を含んでいた。(しかつめらしい意味ではなく。)

後でパンフを読んで、納得。監督が一番好きな映画はチャップリンの『街の灯』だそう。この世を愛で満たしたいと願っている人が魂をこめて映画を創ると、こうなるのだ。


★これから観る人へ 必要な予備知識★

① マレーシアではイスラム教徒と他宗教の人が結婚する時には、他宗の人がイスラムへ改宗しなければいけない。そのため改宗者の側の家庭は切り崩されるようなつらさを味わう。
② 進学のさいにマレー人優遇策があるせいで、中華系の生徒は勉強をいっぱいしなきゃいけない。マレー人のほうは多少のんびりやっても大丈夫。
────ヒンズー教徒のお母さんと、ライバル男子生徒のマイナス感情を理解しやすくなるので、この二つ覚えておくといいよ。
群像劇っぽい複雑な人間関係に最初とまどうかもしれないけど、大きく三つの家庭があってそれぞれの息子・娘・息子がトリプル主人公。




★★追記★★

「これ泣いたよ! 気絶しそうになるぐらいに泣きまくったよ! もう、本当に泣けるんだから! よくよく水分補給してから観るといいよ!」と夢中で周りに宣伝ばっかりしちゃってます。

渋谷イメージフォーラムで期間中(4/1と翌週)に二度観たんだけど、その直近にマレーシア料理店を見つけて、何度もランチしました。安くておいしい。
映画館ではサントラCD買ったよ。でも、収録されてない曲がいくつか(バイク二人乗り場面のLove In Silenceとか)あったのは残念。最重要曲三つはちゃんと(英語のとマレー語のが)入ってるけど。
映像つきのYouTubeでもフルコーラスの「I Go」ほかを観て聴いて、来る日も来る日も泣いてます。やっぱり、イチゴ~添い寝~胡弓~ラストに一番やられます。私もお母さんっ子だから!
助演男優賞もらったのは添い寝のその男の子(彼は主演じゃなかったのね)、有望新人賞はヒンズー家庭のお姉さん(確かに、いい動きしてた)だそうです。
世界中が、ヤスミンワールドみたいになればいいな……。

でも、先生同士の恋慕は、ストーリー上、不必要(もしくは練り不足)かも。