きよこ

タレンタイム〜優しい歌のきよこのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
5.0
2021.12.5 3度目の鑑賞
やっぱり最高だった。。。
久々で細かく観ていったけど、どのシーンも愛が溢れていたから。はじめから泣いたよー。。。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ああ…染み入るように優しい。とにかく優しさに溢れている。そして柔らかい雰囲気。叙情的でロマンチック。音楽も素晴らしい。悲しみも苦しみにもそっと寄り添ってくれる。ずっと気持ちがおさまらずにしばらくサントラを聴いて余韻に浸っていた…。

今年一番の映画。。。



ありふれた日常の中に、ちっさくて、でも大事な出来事が次々とやってくる。何気ない瞬間をさくっと切り取り、自由なタイミングで観せてくる。だから、感情が置き去りになることもしばしば(笑)。涙ぐむシーンの後にすぐに笑いがはいったりして、観客は忙しい(笑)でも、なぜか小気味良いから不思議なものだ。

ヤスミン監督は自身を監督ではなく、ストーリーテラーだと言っていたのも納得。



お気に入りはちょこちょこカットインするムルーの家族。戯れる序盤のシーン。コメディタッチに描かれているのは、監督の好きな映画「街の灯」の影響もあるのかも知れない。大好きな映画だ。なんか嬉しい(*^^*)
特に父親の背中に妻と3人の娘たちが亀の親子のように重なりあうシーン。見逃してしまうくらい短いシーンだが、あまりにも素敵過ぎて心の琴線に触れてしまった。。。ジーンと熱くなって思わず感涙してしまう。最近父親ものには滅法弱い。ヤスミンの優しい魔法にかけられて…。


物語はタレンタイムを控えて瑞々しく展開し、恋愛映画へ。しかし、ある出来事から雰囲気はガラッと変わり、マレーシアの多民族国家として抱えている人種、人権、宗教問題が次第に露になって様々の人々の運命を変えていく。

緊張感が走る!!!…と思いきや、教師たちのコミカルなやり取りで尻ダンスや放屁まで連発して笑わされる。あー感情が忙しい(*´∀`)


この映画の鍵となるのは「愛の言葉」
多彩な言語が飛び交う中、手振り、口話、手話、SNS 、哀しげな二胡の音、歌声、ピアノ、ギター、見つめあう密やかなシーンも無声まで、優しい言葉にそっと置き換えられていく。


ギターの少年と不治の病の母との距離感が絶妙だった。優しく交わされる言葉とスキンシップには幾度となく、目頭が熱くなった。母として、生きざまを見せずして魅せること。なんて高尚な愛の形なのか。。。


京都大学山本准教授の話では、母親役は実際にマレーシアの大女優で、病を抱えて動けなくなった状態でこの役を受けていたというから驚き。


印象的な車イス患者、無垢な子供たち、2羽の小鳥。宗教的な意味合いも含みつつ、天使のようにそっと見守ってくれている存在なのか。それとも幻か。偶然の産物なのか。観客にそっと委ねてくれる。ヤスミン監督亡き後には、真実は誰にも分からない。


 
この映画が沢山の人の心に届きますように(#^.^#)
上映館拡大延長とDVD化を願って。
きよこ

きよこ