エディ

酔いどれ天使のエディのレビュー・感想・評価

酔いどれ天使(1948年製作の映画)
3.7
新興チンピラとヤブ医者の心の交流を描いた黒澤映画。ハードボイルドで荒削りな「赤ひげ」と言って良い。恐らく、三船はこの映画で、自身が演じる「赤ひげ」像を決めたのだと思う。

社会の掃き溜めのような町に構えるヤブ医者眞田は、腕は良いがアル中で人生を棒に振った男だ。そんな眞田の下にある日銃弾の治療を受けにきたヤクザが来た。そのヤクザは肺病の兆しがあったので注意をしたところケンカになったがそれをきっかけに二人は知り合いになった。
三船敏郎演じるヤクザ松永は、強がってはいるが実は心優しい男で、そんな松永を眞田は見抜いていたのだが、不器用な松永は眞田の親身のアドバイスを聞かずに病状を悪化させてしまう。。。

この映画は三船の20代の頃の作品。まだキャリアとしては浅いので脇役的な位置づけなのだが、存在感がありすぎる。映画の主人公は志村演じる医者眞田なのだが、志村を食っているくらいに存在感がある。しかし、脚本は三船を重要視したような作りになっていないので、存在感はあるけど松永の心情や行動の背景を十分に描ききれていないというジレンマが生じている気がする。
松永の無頼すぎる性格、自己破滅的な行動が、単なる強がりだけになっているのが勿体無い。

一方の志村は、無骨だが人情味溢れるはぐれ医者を見事に演じている。ただ、悲しいラストに対しぐっと来るものが感じないのは、やはり松永とのふれあいが表面的過ぎるからだろうし、眞田が転落していった背景描写が足りないからだろうし、ヤクザ間の抗争の描き方が平板だからだろう。
なので、黒澤のピークの頃の作品と比較すると、完成度はもう一歩に思えてしまう。
なにしろ自分にとってこの映画で一番インパクトがあるのは笠置シヅ子がジャングル・ブギーを歌っているところなので、全体的にメリハリの付けかたがちょっと違うかなと感じた。

ただ、この映画の志村を参考にして、三船は後年「赤ひげ」に挑んだんだと思う位、志村演じる眞田と三船が演じた「赤ひげ」がダブって見える。若いときの三船は超ハンサムなだけでなく演技も凄かったということがわかるだけでも、この作品
を観る価値はあると思う。