広島カップ

酔いどれ天使の広島カップのレビュー・感想・評価

酔いどれ天使(1948年製作の映画)
3.8
志村喬の天使をクリスマスに。

戦後、都内の町中にはまだメタンガスを噴出する汚い水溜まりがあり市民はそこにまだゴミを廃棄しているような世相。
チンピラの若い衆(三船敏郎)が腕に銃弾を受けその水溜まりの近所にある医院に転がり込む。
その医院こそ酔いどれ天使こと反骨で酒呑みの医師真田(志村喬)の開業する寂れた病院だった。

三船敏郎と志村喬の黒澤作品における初顔合わせ、といいますか三船は黒澤作品へ初登場。
両役者の魅力に溢れた作品です。

若い三船の触れただけでキレてしまいそうなカミソリのような魅力は一体どうでしょう。
チンピラは滾る若さにまかせて自分の力を信じて突き進みますが結核に侵された身体と心をコントロールできない弱さも合わせ持っています。

一方ブラックジャック的なヒューマニズム溢れる志村の役柄は本作でも存分に味わえますが、島田勘兵衛(七人の侍)や佐藤刑事(野良犬)の落着き払った佇まいとは少し違い、酔っ払って鼻唄は唄うし短気になって物を人に投げつけたりしていつもとちょっと違う(?)志村です。その分人間的な魅力がプンプンして来る羽の無いオジさん天使です。
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