蛇らい

酔いどれ天使の蛇らいのレビュー・感想・評価

酔いどれ天使(1948年製作の映画)
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青森県立美術館にて特集・黒澤明と題した上映会で鑑賞。国立映画アーカイブに所蔵されている35ミリフィルムでの上映。

『羅生門』『七人の侍』などの時代劇ではなく現代劇。黒澤作品をほとんど観たことがなかったので、ざっくりとしたイメージしかなかったが、めちゃめちゃ社会派な映画を撮る監督だった。

病気を世の中や人間の中に潜む悪意のメタファーにし、どんな状況でも病気に立ち向かう強さがあれば治すことができるという前向きな思考でもって展開されていく。しかし、三船の演じるヤクザは、病気に立ち向かう勇気がなく、病気という現実から逃げてしまい、屈してしまう。同じ結核を患いながらも、病気と向き合い賢明に治療に励んだ女学生は助かる。

病院の先生を間に挟んで行われる、病気に屈した人と克服した人の対比がなんとも物悲しく、人の強さの本質が炙り出されている。

現代では劇中のような入り組んだ住宅地のようでありながら開けたロケーションの場所はあまり見かけないので、そこから生まれる不思議なカットが魅力的だった。

医療用のアルコール(100%)に急須のお茶を混ぜて飲む医者で笑った。20代後半の三船敏郎が死ぬほどかっこいい。あと、やたらと物を投げる演出が多い。
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