津軽系こけし

血と骨の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

血と骨(2004年製作の映画)
4.4



欲望に固執し続けた1人の男と、その被害者たる家族を取り巻く醜いバイオレンスドラマ。人間の欲望を包み隠さず描き切るグロテスクさが印象に残る。流血表現などは特にないのだが、ジメジメとした苦しみが淡々と続くので精神的に追い詰められるような感覚になる。これといった教訓じみたものもなく、欲望に執着した男が悲しく破滅していく様をひたすら描いているだけの作品だが、その淡白さが織りなすリアリティは無類である。

個人的には「ゼアウィルビーブラッド」にかなり似てると思った。

北野武の怪物演技には筆舌尽くし難い。年季の入った狂気を魅せれば、この人に勝る俳優はいない。「その男凶暴につき」の比ではない凶暴ぶりである。心に余裕がないために欲望と暴力に飢え、周りなど気にも止めず暴虐無尽に生き狂う。

蛆虫の湧いた豚肉を食べる際に、蛆虫ごと焼いてから口に運ぶ前にようやく息で吹き飛ばすという倫理観のトチ狂った乱雑さがとても印象的。久々に汚い映画を観た、満足である。
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