今年2018年は川島雄三監督の生誕百年ということで、野外上映会や動画配信など色々と企画されているそうな。
川島監督といえば「幕末太陽伝」か有名だけど、個人的には本作の方が好きです。
芝木好子原作「洲崎パラダイス」を映画化した本作は、かつて吉原と並ぶほどの遊郭だった戦後の洲崎(今の江東区東陽)が舞台。
昭和31年当時の東京の場末の描写が細かく、見ていて非常に勉強になる。
本作ではとあるワケありカップルとその周辺の人々2、3人に焦点をしぼり、男女間の複雑な心の機微を描いた、まさに傑作だと思う。
主演は新珠三千代と三橋達也。ちなみに三橋さんは川島作品最多出演俳優である。
新珠さんといえば和服が似合う清楚系美人、三橋さんだとダンディーな二枚目というイメージが強いけど、本作での二人の役柄は全くの逆。
冒頭、勝鬨橋の欄干に凭れかかる男と女。
「これからどこへ行こうか……」(この頼りなさが好き)
流れ者の二人はどこに住もうか思案していたが、男の方は決断してくれず、頭にきた女は彼の腕を掴んで向かったのが歓楽街の洲崎。
早速、ある飲み屋の女中の職を見つけた彼女は、元々商売女だけあって男の扱いに長けており、すぐに馴染み客ができてしまう。
男の方はもはやコミュ障クラスのモジモジ君で、女が他の男とイチャイチャしてるのが面白くないが、ただ黙って見ているしか術がなかった。
結局、男も働かなきゃいかんということになって蕎麦屋の出前に就くが、彼の甲斐性のなさに呆れ果て、女は仲良くなった常連客に誘われてついに飲み屋も辞めてしまう。
本作、印象的な橋や川のシーンが何度も登場して、流れ者の男女の境遇を象徴しているように感じた。
映画は終盤、予想だにしない展開が起こる。まさかこういうストーリー運びになるとは思わなかった。
■映画DATA==========================
監督:川島雄三
脚本:井手俊郎/寺田信義
製作:坂上静翁
音楽:眞鍋理一郎
撮影:高村倉太郎
公開:1956年7月31日(日)