矢吹

洲崎パラダイス 赤信号の矢吹のレビュー・感想・評価

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)
4.0
ワイプがやべえっすね。
テンポも良いし、運動の方向の違いと合わせ方で、後ろ向きにも前向きにも話を持ってく。
見る分に当時の街並みや雰囲気を眺めるだけもかなりいいんだけど、音楽が特に最高ですね。まさに半兵衛で流れてるようなあれの感じもたくさんあるし。単純に映画としての音も良い。

金もあてもなく、バスに飛び乗って、
川の向こうは洲崎パラダイス

にいちゃんパラダイスって何?
天国さ。
天国って何?
天国って天国さ。

女と男の焦り。すれ違い。
女の商売モードの切り替えで際立つ元の生活の暗さ。隣のおっさんは気楽に見える。ただのマンネリじゃないですかって。離れた方がいい人たちと、離れられない人たち。
所詮、中の女はそんなもん。なんですかねえ。
橋を渡るか渡らぬか。
俺はどうしようかな。
死んでみるか。いっそ。
金になんねえ旦那、元遊女の妻、羽振りの良い遊び人、夫の帰りを待つシングル女将、泥だらけの子供たち。夫の帰りと迷い。
赤線。純情。恋心。夫婦関係。などなど、
世の中の移ろいやすさを表象していく。
それは心理的なものにとどまらず、物理的にも。
何度も映る水面。水中のような部屋のライティング。流れる剣。割れるコップ。境界線としての橋や川がめちゃくちゃ機能してたので、最後は川にでも飛び込んでくれるかと思ったが、割と、ハッピーエンド。
男女はすべて、元鞘に戻る。
始まり方と終わり方は構図も場所も変わらない。
しかし、彼は変化した。彼女は変化した。
誰もが失って、得た。
こういう作品は嫌いではない。
過去はどうやったって離れないのだが、
踏ん張ってやるしかないよ。
したたかな緊張に縛られて、川を流れてゆくように、去る。どういたしまして。
蕎麦屋の娘さんが素朴でとてもよい。

惚れ惚れするほどの完璧な死亡フラグを久しぶりに見たぜ。
矢吹

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