【心の奥底に潜むもの】
今、この作品を見返してみても、ぼくの心の奥底に潜む闇のようなものや、弱さがつまみ出されるような感覚を覚える。
従順で真面目な稔。
自由な猛。
実は卑屈な稔。
兄の弱さを見透かす猛。
智恵子を想う稔。
智恵子を愛してもいないのにセックスする猛。
智恵子を追う稔。
智恵子を突き放す猛。
智恵子の転落死をきっかけに二人の向き合い方は変わったように思えたが、稔も猛も、事件どころか、率直にお互い向き合おうとしない。
どこか牽制しあって、間合いに踏み込めず、中途半端な状態が続くようだ。
最後、猛の証言がウソであったことが、フラッシュバックするように明らかになる。
なぜ…。
この疑問がずっと付き纏う。
この理由は、観る人、それぞれに、それぞれの過去や経験に、委ねられているのではないのか。
ずっと考える続けるように要求しているようだ。
稔はバスに乗ったのだろうか、それとも、止まっていたのだろうか。
これも、観る人、それぞれが違うシーンを思い浮かべているに違いない。
自分の心に向き合うことになる作品だ。