東京でカメラマンとして成功している猛は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ独身の兄の稔や、そこで働く幼なじみの智恵子と再会し、3人で近くの渓谷に行くことに。猛が単独行動している間に、稔と渓谷にかかる吊り橋の上にいた智恵子が転落してしまい…。
登場人物達の心と共に、私の心もゆれまくった二時間だった。観終わった後のなんとも言えない余韻に心を留めておきたいような、おきたくないような気持ちになり、検索したら西川美和監督の作品だったと気付いてめちゃくちゃ腑に落ちた。というか、西川美和監督の作品だったから📎してたんだと思うけど、寝かせ期間が長すぎて、逆に新鮮な気持ちで観れたのは何だか得した気分でもあった。
「家族」「兄弟」
親の傘下にいるうちは、よっぽどじゃない限り、兄弟同士、相手の事は理解しているし、想像すれば9割くらいは把握出来ているものだったけど、大人になって、生活が変わり、距離が変わり、新たな家族が出来たりすればもっと、今のお互いを知っていることなんて半分にも満たない気がする。
年に数回しか会わないし、その時間は楽しい話をしたいと思うし、お互いに気持ちよく過ごせるように気遣って、喧嘩だってしないように、心配をかけないようにする。見えない部分が増えるというのは、そういうなのかもしれない。
愛情も優しさも、優越感も劣等感も、大なり小なり兄弟の間で覚えて積み重ねる感情は、他のものとは違うんじゃないだろうか。とても繊細で、自分を形作るひとつになっていく。
あの時、なんであんな事を言ったのか?
なんであんな事をしたのか?
何を思っていたのか?
いつから思っていたのか?
兄だから、姉だから、弟だから、妹だから。
他人じゃないから、強固になる絆もある。
他人じゃないから、修復不可能な溝もある。
それでも、繋いできた心を離すか離さないか。
見切りを付けるか、付けないか。
そんな選択を迫られる時が、
来なければ一番幸せだけど、
来てしまう時もあるかもしれない。
嘘と真実の狭間でゆれる。
愛と怒りの狭間でゆれる。
この兄弟は、大丈夫だと、
ラストシーンで何だかそう思った。
思ったけど、
そう思いたいだけなのかなって、
私の心はゆれたままいる。
2022-136