こたつむり

ラヂオの時間のこたつむりのレビュー・感想・評価

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
3.9
★ ラヂオがグーグー ラヂオがガーガー
  無限の可能性を秘めたラヂオは終わらない

近年は悪評が目立つ三谷幸喜監督。
監督デビュー作である本作を鑑賞するのは3回目ですが…うん。相変わらず面白かったです。先の展開を知っていても楽しめるのは傑作の証。見事ですね。

そして、劇中で西村雅彦さんが叫ぶセリフ。
ネタバレに抵触するので引用はしませんが、あれこそが三谷監督の“魂の叫び”。飄々とした外見からは伺えない深遠なる想いが詰まっていました。

やはり“魂の叫び”だから人の心を動かすわけで。巧みな脚本、豪華な出演陣なども大切ですが、物語の主軸にヒリヒリとした“想い”があるからこそ、映画は輝くのです。

はたして今の三谷監督はあの“想い”を憶えているのでしょうか。そして、本作と同じように心の奥から湧き出る“想い”を映画の中に詰め込んでいるのでしょうか…。

…なんて烏滸がましい心配ですけども。
ただ、三谷監督は器用な御方ですからね。
小手先だけで描いてしまうことが出来ると思うのです。

しかし、悩んで悩んで悩んだ末に吐き出したものは…必ず誰かの心に届くのです。三谷監督の脚本で言えば、田村正和さん主演のテレビドラマ『総理と呼ばないで』は巷で凡作の評価でしたが、僕の心には届いていましたよ。

だから、三谷監督には原点回帰を目指していただきたい所存。実績豊かな俳優さんたちに頼るのではなく、ペン先で人の心を震わせる…そんな作品が観たいものです。

…なんて偉そうなことを書いていますけども。
酷評の嵐だった『ギャラクシー街道』は未鑑賞なので…ここは覚悟を決めて2時間を費やさないと…説得力がないですよね…。

まあ、そんなわけで。
かなり脱線した感想になりましたが、本作に限って言えば“安心してオススメできる作品”。まだ鑑賞していない人はラッキーです。事前情報を仕入れずに鑑賞してみてください。

最後に余談として。
劇中で「上を見上げたとは言わない」と指摘がありましたが、誠にその通り。言葉は生物なので変化して良いと思いますが、重複表現を見ると頭痛が痛くなりますからね。ダメです。
こたつむり

こたつむり