R

ラヂオの時間のRのネタバレレビュー・内容・結末

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

1997年の邦画。

監督は「ザ・マジックアワー」の三谷幸喜。

あらすじ

ラジオ局「ラジオ弁天」で普通の主婦鈴木みやこ(鈴木京香「食べる女」)が脚本を手がけた作品が生放送のラジオドラマで使われることになった。しかし、リハーサルも済ませた本番当日、主演女優の千本のっこ(戸田恵子「それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星」)のワガママから端を発して、ドラマは思わぬ方向に向かう。

三谷幸喜、恐らくそのルックス含めて日本で上位に位置する有名な劇作家で脚本家だろう。

それに反して、作品評価としては映画ファンの中ではイマイチな評判で特に1番最近の作品である「ギャラクシー街道」はあんまりな評価でそのキャリアにも陰りが見え始めている。

ただ、そんな近年の低評価っぷりを観ていると俺個人としては非常に忸怩たる思いを抱えてしまう。

なぜって、三谷監督がとった今作が、大好きだからだ!!

思えば、ラジオに夢を抱いたのは今作を観たのが母親の勧めできっかけであり、ワンシチュエーションコメディの面白さに気付いたのも本作が初めだった。

鈴木京香、唐沢寿明(「ラストコップ THE MOVIE」)などの主役級俳優から西村雅彦(「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」)、戸田恵子、梶原善(「グッドモーニングショー」)、近藤芳正(「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでる」)などなど三谷作品お馴染みのバイプレーヤーが揃う本作だが、その役者陣を支える脚本部分がやはり良い。

「ラジオ」業界あるあるというよりかは生放送の裏で頑張る人たちの奮闘っぷりをコメディたっぷりに描いているんだけど、まぁ色んなことが起こるわ起こる。

主に出演陣のワガママと上層部のいちゃもんやスポンサーがらみの板挟みの中で西村雅彦演じるプロデューサーの牛島が唐沢寿明演じる敏腕ディレクター工藤や現場のスタッフたちと乗り越えるわけで。

面白いのは生放送なのが、「テレビ」ではなく「ラジオ」だと言うこと。

だから、視覚的情報が無い分、極端なことを言ってしまえば、どんな荒唐無稽な設定でも実現できてしまうわけで、さぁそれをどうやって突破していくかってところがまぁ面白い!!

初めはキャラクターの名前が外国名になり、舞台がアメリカのシカゴになったり、主人公の職業が女弁護士になったり…。

生放送なので、やり直しが効かないので、急ごしらえの設定で無理やりこじつけた結果、小規模なメロドラマがまるで一大スペクタクル作品のようになってしまっているのが笑える。

だからというか、そんなこじつけと後付けで塗り固められた本番での作品は観客である我々からするとあまりにも飛躍しすぎて、原作の何倍も面白いと感じちゃうわけだ。

やっぱ、人の想像力は無限大の可能性を秘めているんだね。

特に個人的に面白かったのが主人公のメアリー・ジェーンが溺れてしまったことで愛するピーター・マクドナルドに助けられるんだけど、シカゴには海がないということに後から気付き、さぁ、どうする!?→そうだ!!ダムだ!!ダムを決壊させよう!!というしのぎ方。

いや、力技にも程があるだろっ笑!!

ただ、実際にダムを決壊させるシーンでは音響がないことで昔は凄腕の音効だった守衛、伊織万作(藤村俊二「黒執事 Book of Murder 下巻」)の助言を受け、発泡スチロールと掃除機の吸引音を使って表現することで、それなりにイメージすることができちゃうからすごい。

まぁ、そんなこんなで、原作の意向など度外視で、遂に我慢の限界を超えた作者のみやこがスタジオに立て籠もってしまうんだけど、そこで一番原作に不誠実かに見えたプロデューサー牛島が語る「仕事との向き合い方」が不覚にも胸を打つ。

そうだよなぁ、誰だっていつでも満足のいく結果で終わるわけではない。中には自分の不甲斐なさややるせなさがこみ上げてくるような結果になることもある。それでも最後まで全うしなければならない。なぜなら、それが自分が選んだ「仕事」だから。

大人になって、仕事についてからまた観てみると、小さい時は感じなかった感慨を持つことができるシーンだった。

また、昨今漫画や小説の実写化映画が多く、その中でも問題視されているのが「原作レイプ」という現象だけど、まさにそれを地でいく作品ではあるけども、それと同時にどんなに荒唐無稽な物語でも、それを裏で作る人がいて、その人なりに頑張ってるということも感じさせられる。

うん、やっぱり三谷幸喜は原点に立ち返って、この頃のように小規模な作品を作った方がいいんじゃないかなぁ。
R

R