Melko

ラヂオの時間のMelkoのレビュー・感想・評価

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
3.6
汗と涙と根性のラヂオドラマ珍奮闘記。
ものすごいセリフ量もあいまって、大人の上質なコメディって感じ。

ある主婦の書いた小説を、ラヂオドラマ化。修正の効かないラヂオという一発録りの現場でハプニングに次ぐハプニング。
自分のことしか考えない役者、媚び諂うプロデューサー、調子のいいことしか言わない編成局長のせいで、小説の中身はぐちゃぐちゃに書き換えられ、とんでもない展開に…

仕事の関係で、アニメのアフレコ現場に行ったことあるけど、こんなわがままで自分勝手な声優や役者、いません笑
こんなことして自分勝手に振る舞ってると、仕事、来ません笑
「これはわたしが書いたものとは違う。最早全然違うものなんだから、最後のクレジットでわたしの名前を呼ばないでほしい」自分の作ったものをめちゃくちゃにされたみやこの叫びも理解できる。
対するプロデューサー牛島の、「みんな妥協して妥協して、物作ってる。この番組を成立させ、作り上げることが自分の責任なんだ」というのも分かる。だからこそ、
ディレクター工藤の「ここにいるみんなは作品の中身なんて考えちゃいない。人を感動させる作品書きたいなら、この仕事は辞めた方がいい」ってのも、そうだと思う。

やりたいことと、聴いてる人にウケるものは違うのかもしれない。でも、始めた以上は、責任持って仕事をやり遂げる。それが、仕事人。それが、大人。
バラバラだったメンバーが、それぞれの使命のもと、放送時間内での完走にむけて一致団結するラスト20分は、熱かった。

キャストは今とほとんど変わらない見た目ですごい。加えて、三谷作品ならでは、キャストがいちいち豪華。
数秒しか映らない市川染五郎(現 松本幸四郎)
ものすごい引きでしか映らない宮本信子
後頭部しか映らない佐藤B作。。!
この時で十分老齢のおヒョイさんに、自分の頭をシバかせるのはびっくり笑笑

控えめ主婦 鈴木京香も新鮮。隠しきれない綺麗さ。

役者それぞれの見た目のイメージから連想する役配置が絶妙で、さすが三谷監督。

大ピンチの中一致団結して作品を作り上げるのは、他の方も書かれているように「カメラを止めるな!」を想起させるが、
ピンチをチャンスに変え、面白い物を作り上げる作り手側の根性・出来上がった時のカタルシスで言うと、わたしの中では「カメ止め」に軍配。ラヂオの時間のようにあれだけ人数がいると、分担して進めることによって、なんか、なんとかなってしまう感が伝わってくるからだ。このシチュエーションは、やはり少人数でこそ、活きる。
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