るるびっち

街は春風のるるびっちのレビュー・感想・評価

街は春風(1937年製作の映画)
4.0
レビュアーの方に、貴重な情報を教えられて鑑賞。
ウィキ掲載のスクリューボール・コメディ10選のひとつ。
高級毛皮を拾ったせいで、わらしべ長者のように人生が変わる女性の話。
プレストン・スタージェス脚本の伝説的な一本。
これまでDVDがなくて焦らされたせいで、期待値爆上がり。
ハードル上がりすぎたせいか、思ったよりミラクル感が希薄。
もっともっとナンセンスに誤解と間違いのつるべ打ちで、ミラクルわらしべ展開と勝手に妄想していた。
誤解から高級ホテルにタダ泊するが、ホテルのオーナーの勘違いと打算に過ぎない。

スクリューボール・コメディといえば、エキセントリックな男女がいがみ合い、おかしな風に物事が転がるラブコメという印象が強い。
けれどマーク・ トウェインの『王子と乞食』を変形して、ラブコメにしたような物が基本構造のような気がした。(独断と偏見)
他人の人生を変える力を持つ者は、昔なら王様や領主だろう。
資本主義のアメリカでは、王様の代わりが資本家なのだ。
今まで世界大恐慌の影響で、金持ちと貧乏人がよく出てくると思っていたが、そもそも構造が『王子と乞食』的なのではないか?
奇人の金持ちと変人の貧乏人という設定が多い。
スクリューボール・コメディに出てくる資本家は大抵気まぐれで、思いつきで妙な提案をして貧乏な主人公を振り回す。
貧乏な主人公も物怖じしない変人で、誤解を生んでおかしな方に物語が転がる。それを男女のカップルで演じさせると出来上がり。
本作も資本家の気まぐれと周囲の誤解、物怖じしないが説明が足りず周りに誤解を生む主人公の鈍感さがポイントだ。

他人の人生に影響を与えるならば、資本家でなくても良い。
『教授と美女』ならギャング。
『凱旋の英雄万歳』なら強引な海兵隊。
他に市民の圧力や噂なども機能するだろう。日本人なら同調圧力で、人生を左右されるかも知れない。

もう一つスタージェスの作風では、主人公が現状認識できず混乱していくパターンが多い。
『レディ・イブ』の、騙され過ぎて訳が分からなくなるヘンリー・フォンダ。『サリヴァンの旅』の、殴られて健忘症になるサリヴァン。
『ハロルド・ディドルボックの罪』で、ハロルド・ロイドは飲み過ぎて昨日の記憶を失っている人物。『ハングオーバー』の元ネタのような話。
対照的なのが、ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーシーの『フロント・ページ』『特急二十世紀』の主人公たち。
ヘクトの描く人物は、相手を追い込んで混乱させて自分の目的を果たそうというエゴイスト。
被害者と加害者の関係かな。
だからヘクトとスタージェスのストーリーを取り替えたり、組み合わせたり出来るんじゃないかと勝手に空想している。
結局、全部ただの妄想かな?
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