半兵衛

ひとり狼の半兵衛のレビュー・感想・評価

ひとり狼(1968年製作の映画)
4.0
聞いた話によると市川雷蔵は中村錦之助(萬屋錦之介)をライバル視していたらしく、錦之助が主演した「関の弥太っぺ」や「沓掛時次郎・遊侠一匹」のような股旅ものの傑作を撮りたいと考えていたらしい。
だとすると大映の経営が傾き、雷蔵自身死の前年であるこの時期に「ひとり狼」を作れたのは奇跡であり、役者としての最後のチャンスを掴めたとしか言いようがない。人間性を拒絶し、ひたすら渡世人として生きるがその内には苦悩を秘めた男、「炎上」にはじまり「斬る」三部作、「眠狂四郎」シリーズ、「陸軍中野学校」シリーズでそうしたキャラクターを演じた市川雷蔵の集大成といえる演技が堪能できる。
そうした市川の執念に応えるように、今までの陽気な旅人という渡世人のイメージを捨て、リアルな渡世人の世界を描いた演出や脚本も素晴らしい。市川演じる伊三次の生きざまを見届ける長門勇の渋い演技も映画の魅力を増している
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