みおこし

キャット・バルーのみおこしのレビュー・感想・評価

キャット・バルー(1965年製作の映画)
4.2
個人的西部劇映画のオールタイムベスト入り!こんな素晴らしい作品なのに、出会うまですごく長い時間がかかったことを猛省中…(笑)。このジャケット写真からだとあまり伝わらない部分も多いのですが、西部劇が苦手な人でも十分楽しめる、異色のウエスタン・ミュージカル・コメディ!!(笑)

久々にワイオミングにある実家に戻った、教師を目指している慎ましい娘キャサリン。そこで彼女は牧童のジャクソンから、彼女の父親フランキーが危険にさらされていることを知る。地元の有力者サー・ヘンリー・パーシヴァルがフランキーの水利権を狙っており、さらには謎の殺し屋ティム・ストローンも牧場を訪れるなど、不安を感じたキャサリンは、高額を支払って殺し屋のキッド・シェリーンを雇うが、実際の彼は常に酔いつぶれた飲んだくれで…。

開始早々、絵本のような可愛いタイトルロールが流れ、さらにあの伝説の歌手ナット・キング・コールとスタッビー・ケイが突然バンジョーを弾きながら歌いだすという、誰も想像し得ないオープニング(笑)。この二人は要所要所で狂言回しとして登場しては、楽しく「キャット・バル~♪」と歌ってくれます。ちなみにこの時コールは末期の肺がんと闘病中で、本作の公開4か月前に亡くなったとのこと。遺作とは思えないほどに生き生きと歌う姿に、何だか切なくなってしまいました…。
そんな音楽面でも特筆すべき本作ですが、とにかく全編通して明るい世界観!西部劇特有の砂ぼこりで雄々しいイメージが苦手な方も、この明るさと分かりやすさには安心して観られるはず。
主役のキャサリン、後の”キャット・バルー”(詳細は伏せます)を演じるジェーン・フォンダの健康的でパワフルな魅力がさく裂。さらにそんな彼女の思いがけない冒険に同行するメンズもみんな面白い上に情に熱くて、おてんばなキャサリンに何とかついていきながら仲間としての絆を深めていく過程が最高に楽しかったです。特にお調子者のクレイとキャサリンとの一進一退の恋模様も爽快そのもの。

しかし、本作の陰の主役はキッド・シェリーン。リー・マーヴィンはこの役でアカデミー賞主演男優賞など総なめ。ジャック・パランスなど、有名俳優がこぞってこの役を演じたがったということですが、それも100%納得の超オイシイ役柄でした。
終始ビン片手に飲んだくれていて、このジャケット写真からも分かるように馬にさえまともに跨がれない酩酊状態での登場(笑)。そんな彼が、雇い主のキャサリンの窮地を目にした瞬間、最後の最後にキメてくれる…というプロットに完全にやられました。クールなタフガイのイメージが強いマーヴィンの振り切りすぎたコメディ演技も大好き!

いつの時代も、落ちこぼれや立場的に弱い者たち、社会的アウトローが協力して大きな成果を生み出す...という物語に人は心動かされるんだなと。キャット・バルー軍団のハチャメチャ珍道中にパワーと笑顔をもらえる爽快な1本でした。
本当にオススメだし、ぜひいつかリメイクして欲しいと心から願う作品です。
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