シズヲ

キャット・バルーのシズヲのレビュー・感想・評価

キャット・バルー(1965年製作の映画)
3.6
オープニングからいきなりナット・キング・コールとスタッビー・ケイが陽気に弾き語りするコメディ系西部劇。ストーリー自体は解りやすく復讐劇であるものの、ミュージカル調の語りや何処か能天気なムードのおかげで終始に渡ってユーモラス。父を殺されたことで教師から悪党に身を落とすことになった主人公の境遇なんかは普通に悲惨なのに、コミカルかつエネルギッシュに突き進んでくれるので全く湿っぽくならない。取り巻きの男達も全員それぞれの形で主人公に好意を持って協力してくれるので微笑ましさすら感じる。

主人公を演じるジェーン・フォンダはスタイルも良くて美人だし、男衆を引っ張るお転婆ぶりも可愛らしくてグッと来る。父を殺されてから迷わず復讐のために戦う道を選ぶ気丈さも好き。愛嬌も相俟ってほっとけない魅力があるのだなあ。酔っぱらいガンマン役のリー・マーヴィンも中々いい味を出してて、初登場時の支離滅裂な饒舌ぶりなんかは如何にも「飲んだくれ」らしくて秀逸。その後酒を断ってかつてのようなアウトローに戻る下りもベタながら何だかんだで好き(アウトロー装束への着替えをじっくりと映す場面がかっこいい)。他の脇役達も総じて印象的なもんだから美味しい。

愉快な映画だけどゲラゲラ笑えるという感じではないし、もうちょっとハジけた内容にしても良かったんじゃないかなとは思う。それでも間の抜けた空気や微笑ましい描写など、クスリと笑ってしまうようなユーモアには溢れている。全体的に良くも悪くもサクッと軽い口当たりだし、アカデミー賞にノミネートされた割にそこまで大した作劇でもないけど、緩いテンションで気楽には見れる。あとコメディといえど乗馬スタントによるアクションなんかはきっちりやっているのがニクめない。
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