Narmy

転々のNarmyのレビュー・感想・評価

転々(2007年製作の映画)
3.9
大学8年生の竹村文哉には84万円の借金がある。
その文哉の元に突然現れた借金取りの男、福原は3日でお金を用意するように脅す。
ところが次の日、その福原から突然借金を返す方法を提案される。
その方法とは東京の街を福原とともに散歩する、「東京散歩」をすること。
期限はないがそれだけで100万を貰えることになる為、嫌々ながらもついていく。

なんだ、このほっこり楽しい雰囲気??

風景に音、穏やかな空気の中で、福原の飄々とした態度がはじめは何処か浮いているんだけど、だんだん馴染んでくる。
予測のつかない展開ばかりなのにあくまでも平凡な日常というスタンスで映し出す。
その散歩の中で文哉と福原は徐々に距離を縮め、お互いの身の上を知る。
途中色々あるアクシデントは面白く、岸部一徳に纏わる都市伝説まで(笑)

この男2人の散歩とは別のストーリーも並行する。
こちらも日常を切り取ったような何でもないユーモアのある人達の職場での風景なんだけど、これが男達のストーリーと交差してしまうんじゃないかとヒヤヒヤしちょっとしたスパイスになっている。

1度ゆっくり歩くことで見えてくるものがあるのは散歩に限らず人生も同じ。
長い人生も散歩をするように周りを見渡したり足をとめてみたりがきっと必要なはず。
2人は散歩をしながら人生をも歩く。
一緒に歩くことで絆も深まり、情も湧く。
この体験は文哉にとっては、今まで空白だった家族との思い出であり、この出来事がこの先の人生に必ず良い影響を及ぼすはず。

設定からは暗さしか感じなかったストーリーに上手く家族の絆や温かみそして人生までを描いているのは秀逸。
不思議で温かな余韻に包まれ、心が癒された。
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