理不尽に虐げられ、社会と支配の奴隷として生きてきた女性が、人並みの幸せさえ奪い取るクズどもを皆殺しにする映画。この地獄を淡々と描き切るのがアキ・カウリスマキという作家だと思っていた時期さえあった。当然、労働三部作ではベストだし、カウリスマキ映画の中でも本作を最も見返している。
悲劇を好むわけではなく、これもカウリスマキの「意思」の映画で、動き出したエンジンの向かう先が人殺しだっただけ。それが静かな狂気も孕んでいるのが最高で、毒を混ぜる、その決意が最初で最後の自発的行為だったというのが途方もなく侘びしく切ない。
ここまでブレッソンだと、開き直り、逆にわざと見せつけている可能性もある。救いのない残酷なお話をブレッソンのモノマネで撮る、構造自体がシュールなギャグなのではないかと疑ったりもする。
カティ・オウティネンはあの顔面がすでに映画(大好きな役者)。肉体の一部を切り取るように映すブレッソンな手法、そうなると身体のフォルムも個性ある顔(からの無表情)も極めて重要。