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テープ(2001年製作の映画)
3.8
 缶ビールを流しに捨てながら、もう1本を一気飲みするヴィンセント(イーサン・ホーク)の奇行。ミシガン州ランシングにあるモーテルの2人部屋の一室で、ヴィンセントはハイになった身体でいきなり腕立て伏せをする。オークランドで消防士をするかたわら、ドラッグを売り捌くヴィンセントは久々に帰郷すると、高校時代の親友であるジョン・ソルター(ロバート・ショーン・レナード)をここに呼び出した。映画監督のジョンは明日行われる映画祭に新作を出品するため、10数年ぶりに故郷の地を訪れる。互いの近況報告、3年付き合った女との別れを切り出すヴィンセントの様子はどこか吹っ切れている。だがジョンと再会を果たしたヴィンセントは、突如10年前のあの日の出来事についてジョンを問い詰め始める。それは、ヴィンセントの初恋の恋人エイミー(ユマ・サーマン)に関わることだった。ビア缶に穴を開けて飲むなど、突飛な行動を続けるヴィンセントは、午後8時に約束していると意外な事実をジョンに伝える。彼は今では地方検事補となっているもう一人の当事者エイミーもここに呼び寄せていた。

 公開当時は未上映だったスティーヴン・ベルバーの舞台劇を映画化しようとしたイーサン・ホークは、『恋人までの距離(ディスタンス)』で共演済みだったリチャード・リンクレイターに話を持ち掛ける。安モーテルの中での3人の心理劇という映画化しづらい物語を、リンクレイターは一夜という区切られた時間の物語に魅力を感じ、映画化する。高校の元同級生男女の三角関係は、ヴィンセントの10年間引きずり続けた想いに火を付ける。そうとは知らずにモーテルにやって来たジョンとエイミーは互いの再会に気まずさを感じながら、ヴィンセントの私怨を込めたテープに翻弄される。映画監督、地方検事補と互いに夢を叶えたように見える2人に対し、ヴィンセントは消防士の仕事を続けながら、どこか空虚で自堕落な生活を続けている。「私にとってあなたは初恋の人よ」というエイミーの言葉に妙な地雷原となり、ヴィンセントはゆっくりと10年前に起きた心のキズを語り出す。

 現実を生きる女性以上に、ロマンチストな男性の誤解や妄想が生む過去の美談とは枚挙に遑がない。ドラッグでハイになり、アルコールの回ったヴィンセントはかつて天使に見えたエイミーの化けの皮を剥がそうとするが同時にそれは、天使であって欲しいというアンビバレントな感情に縛られてもいる。起動性や役者の即興に特化したデジタル・ビデオ・カメラの映像は、86分という区切られた現実の時間を映し出している。