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狩人の夜のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

狩人の夜(1955年製作の映画)
4.1
カルト的人気のサスペンスだと思って観始めたのに、途中おとぎ話になって気を抜いたら、再び執拗な殺人犯が追いかけてきて怖かった。でも後半は子どもたちが神に守られていく神話のようでもあった。

偽牧師のロバート・ミッチャムのサイコパスっぷりが見事だった。怪しいと気づくのは主人公のジョン少年とお店のおじいさんだが、言葉巧みに次々と女性たちが甘い罠にはまっていく。フェロモン出しながら女性を誘い利用し、殺害する。歌も説教もうまくもっともなことをいう。

希望は残ったが後味がよかったとは言えない。
もしこの映画に教訓があるとしたら、甘い言葉にご用心だろうが、盲信したり暴徒化する大衆の側にも問題がありそう。

リリアン・ギッシュだけが、誘惑に負けず、ロバート・ミッチャムの甘い歌声に対して神を讃える歌を被せて歌いあげる。同じ歌詞なのに、悪魔は甘く歌い誘惑する。敬虔な信者は強く清らかに歌い、心を支える。

予想のつかない展開をつなぐのは美しい声の歌だった。子どもたちの歌う歌詞はよく聴くと怖い。

魚、かえる、白馬、かめ、うさぎ、蜘蛛、羊、小鳥、牛、犬、キツネ、鶏、あひる、フクロウ、猫、メタファーとして登場したみたいだけれど、次々に現れては消える。リンゴも。

後半に現れるリリアン・ギッシュが主役のようにも思えた。誘惑に打ち克ち、世間に甘い期待はしない厳しいリアリストでもあった。

展開の変化が大きく、伏線は回収されない。前半と後半では兄妹と犯人以外の登場人物は総取っ替えになる。なのでクロージングしていない錯覚に陥り、悪魔が隙を狙い続けているかのような余韻を残した。拝金主義の新興宗教への警告にもみえた。

寝ない悪魔、川底に眠る母親、流される小舟で眠る子どもたち、夜の闇に眠らず銃を向けるリリアン・ギッシュ。映像が美しかった。
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