よーだ育休準備中

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

5.0
脱獄は不可能と言われていた魔法牢獄アズカバンから『例のあの人』の手下である殺人鬼Sirius Black(Gary Oldman)が脱獄した。失脚した主は『生き残った男の子』さえ消えれば力を取り戻すことが出来ると信じて。

I solemnly swear that I am up to no good.


◆ Something wicked this way comes.

シリーズ一作目の『賢者の石』、そして二作目の『秘密の部屋』で魔法の世界に命を吹き込んだChris Columbus監督が降板し、新監督Alfonso Cuaronの下で撮影された三作の『アズカバンの囚人』。従来の二作品と同様に魔法の世界に散りばめられた謎や冒険は我々を大いに楽しませてくれるものでしたが、その質は明らかに異なっていました。

家出をしたHarry (Daniel Radcliffe)が《夜の騎士バス》に出会う前、夜の公園で遊具が軋む不気味な演出から幕を開けた今作。恐ろしい《吸魂鬼》との邂逅では、周囲に強烈な冷気が漂うなど、原作とは異なるアレンジが加えられていました。原作の世界を映像に落とし込むだけでなく、原作の世界観を噛み砕いた上で映像作品ならではのアレンジを加えていく。監督の変更は魔法界に新しい色彩を加えてくれました。(食べたら動物の鳴き声が真似出来るお菓子、宅飲みでみんなで盛り上がりたい...!)

ホグワーツの三年生に進級し、13歳を迎えたHarryたち。従来の作品で彼らは基本的に(休暇中と夜間を除いて)学生服姿でしたが、Cuaron監督以降、彼らのファッションにも変化がみられるようになります。制服を着崩してみたり(五作目で『制服の乱れ』に対して言及するシーンもありました)、カジュアルなオフのスタイルで過ごすシーンも。段々と垢抜けてきた様子が窺え、リアルなティーンズらしさが素敵でした。今作では『brilliant!』ってフレーズがやたらと出てきたように感じましたが、気のせいではないはず。英国ティーンエイジャーたちには『ヤバい!』『スゲぇ!』くらいの感覚で使われてる言葉なのかな。

今作から新たにメインテーマと同等に取り扱われた楽曲『Double Trouble』も耳に残り、ダークな雰囲気が増した今作にマッチする名曲。個人的にもかなりお気に入りの曲です。ホグワーツ大広間に並んだ《フロッグ合唱団》のインパクトも良かった。今作でシリーズの音楽制作から退く映画音楽界の重鎮John Williamsは、最後に素晴らしい楽曲を手掛けてくれました。


◆ Innocent blood shall be spilt andー
Servant and master shall be reunited once more.

グリフィンドール寮の仲良し三人組が力を合わせて隠された謎を解き明かし、《闇の帝王》その人の目論見を挫いてきた前作とは異なり、遂に《闇の帝王の下僕》がスルリと逃げおおせてしまう今作。作品全体を通してうっすらと影を落としたように薄暗い画が続いていたのが印象的でした。

不吉な《占い学》、不安を煽る《死神犬》の影、《叫びの屋敷》と《狼男》など、児童文学作品というよりもダークファンタジーの色味が濃くなった今作においては、映画作品としての演出もよりシャープでスパイシーなものに洗練されたと感じます。ファンタジー作品ではあるものの、前作までの《愛の力》で強引にハッピーエンドを迎えるご都合主義はなりを潜めていました。

身の丈を超える苦難がふりかかり、等身大でもがく主人公たちが印象的でした。それでもAlbus Dumbledore(Michael Gumbon)校長からの助言《If you succeed tonight more than one innocent life may be spared.》と《逆転時計》を使って最後には『罪なき命』を救うことに成功するのですが。前作ではHarryとRon(Rupert Grint)が最後に見せ場を作りましたが、今作ではHermione(Emma Watson)が活躍した点も上手に差別化されていて良かったです。クレバーな彼女らしい時間を使ったミッションは非常に見応えもありました。


◆ You know happiness can be found even in the darkest of times.
ー If one only remembers to turn on the light.


偉大な魔法使いAlbus Dumbledoreを演じた名優Richard Harrisの逝去後に撮影された今作。大役を引き継いだMichael Gumbonでしたが、個人的にはガンボンドア先生、結構好きでした。R.Harrisの(オルカ追いかけていた時からは想像もつかないほど)優しげで含蓄の深い好々爺然としたキャラクターは勿論良かったです。彼が作品の最後に愛情深い名台詞を残して物語を締め括る前二作は、それだけで作品の温かみが増していたと感じていました。

今作以降のM. Gumbonは10歳若返っただけあり、校長先生の身振り手振りが素早くなっています。『It's not in the NATURE of a DEMENTOR to be forgive.』と韻を踏むようにワードを強調したり喋り方も若返って活力のあるお茶目な校長という印象に。

A child's voice however honest and true is meaningless to those who have forgotten how to listen.

たとえ正しい事だとしても、子供の言葉というだけで聞こうとしない大人たちには意味をなさない。

If you succeed tonight more than one innocent life may be spared.

だからYouたち、やっちゃいなよ!


公式設定の『茶目っ気たっぷり』を全面に押し出したキャラクターとしてリビルドされていたのは、個人的に大あり。超好き。


暗い時代でも幸せを見つけることは出来る。
明かりを灯すことさえ忘れなければ。



そして今作で『愛』について説くのは偉大な校長先生ではなく、HarryのGodfatherでした。

The ones that love us never really leave us.
And you can always find them in here.

胸に手を当てて囁く声が優しすぎる...。


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さーきとよーだのハリポタマラソン。
原作のストーリーだと次回作《炎のゴブレット》が好きなんですが、映像化作品の中では今作《アズカバンの囚人》が一番好き!

Sakiちゃん今回もありがとう!


ーMischief managed.