この映画、公開時に見た時は、あまりにふざけてるので頭きて劇場を出てきたのを覚えているが、あれから何十年も経ってみて、大人になった今見れば、パロディやオマージュをいい感じに受け止められるんじゃないか(?)と思い、無性に見てみたくなって久しぶりにちゃんと見てみたんだが、
感想は若い頃と変わらず、呆れ果てて終わった。
当時、横溝正史、金田一耕助は空前の大ブーム。『犬神家の一族』『悪魔の手毬唄』『獄門島』『女王蜂』と市川崑の初期4作がいずれも大ヒットとなった翌年に公開されたのが本作『金田一耕助の冒険』。
それが、こんな、ありとあらゆるパロディと自虐ネタを盛り込んだ作品だとは!
だって、監督はあの大林宣彦、ダイアローグライターにつかこうへい、撮影も木村大作ですよ。こんなすごいメンツで、こんなふざけた映画撮ったなんて!
主演は石坂浩二、じゃなくて、TVドラマ版で金田一耕助を演じていた古谷一行。
金田一耕助、唯一の未解決事件をどーのこーのと言うけれど、
田中邦衛の等々力警部に「あんたが行くところ殺人が起こる」「名探偵とか言ったって、誰も救えたことがない」とか言われちゃうし、
金田一耕助本人も「もっと殺人が起きそうですね〜」とかニコニコ言っちゃう。
ここまで自社のキャラクターとして育ててきた「金田一耕助」を茶化す茶化す。
刑事たちが夕陽に「うぉー!」って吠えてたり(『太陽にほえろ』)、岸田森の吸血鬼が出てきたり(『血を吸う眼』他)、街に『ハウス』のポスターが貼ってあったり、当時の、当時を知らなきゃわからないパロディ満載!
劇中劇で三船敏郎の金田一耕助を出してきたり、樹木希林がめちゃめちゃ若かったり、坂上二郎が重要な役で出てきたり、くっだらない映画なのにキャスティングはやたらと豪華!
熊谷美由紀(現在の松田美由紀)率いる窃盗団がローラースケートで走り回るなど、昭和のポップカルチャーも大いに盛り込まれている。
「天は我々を見放した」とか『八甲田山』のパロディとか、「私の帽子、どこへ行ったのかしら?」と『人間の証明』のパロディなど、角川映画の自虐ネタも。
極め付けは横溝正史先生の「私はこんな映画にだけは出たくなかった」という台詞。
砂浜で『悪魔の手毬唄』や『獄門島』の小道具で遊ぶ金田一耕助。角川春樹は、どんなつもりで本作を企画したんだろう? 引き受けた大林宣彦も、どんな気持ちで作ったんだろう?
長年の金田一耕助、横溝正史ファンとしては、年を経て見ても、ただの悪ふざけにしか見えず、笑うこともできず、洒落に感じることもできなかった。
*「コロナです。付近でコロナが発生しました!」と言って防護服を着た人たちが消毒剤を撒くシーンがあったが、昭和の頃にもコロナ騒ぎがあったんだね。