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ゼロの焦点のodyssのレビュー・感想・評価

ゼロの焦点(1961年製作の映画)
3.0
【3人の女優】

比較的最近にも映画化されたミステリーですけど、広末涼子嫌いの私は見ず、代わりに(?)こちらをレンタルで借りて鑑賞しました。モノクロ。

今から見ると、ミステリーとしては物足りないんですよね。これは社会派ミステリー作家として活躍した原作者の限界もあるのかもしれない。

また、夫の二重生活がポイントになるわけだけど、そこがもう一つ納得しかねる。いや、男なんてこんなものだから、本宅の妻と現地妻とふたりいるのは別に構わないんですけど、いうならば後始末をああまでしてしなきゃならないんですかね。手切れ金を渡してドロンすればいいんじゃないかと思ってしまう。

特にこの場合、何らかのやむを得ない事情でそうなった(例えば洋画の『ひまわり』のように)のではなく、あくまで見合いによって本妻を得ているわけだから、まあ上司のすすめが断り切れないとかいう事情も考えられるけれど、男は別に名家の出身などではないようだから、実は同棲している女性がいましてと言えばそれで済むことなんじゃないかと首をひねりました。

だから、これはミステリーとしてではなく、3人の主演女優で愉しむべき映画でしょう。私は特に、高千穂ひづるの社長夫人がよかったな。有馬稲子は、もう少し出番を増やしてあげたかったですね。今一つ実力を出し切れていないみたい。久我美子は顔のほくろがちょっと気になってしまいました。

あと味わうべきは、やはり時代かな。金沢の都市としての景観は今とはずいぶん違う。モノクロ画面のせいもあって、黒い屋根瓦の家がずうっと続いていて、裏日本は暗いという通俗的なイメージにぴったりですね。市内には路面電車が走っている。自家用車を持っているのは社長などのお金持ちだけ。ウィスキーの角瓶は高級品。まぎれもなく昭和30年代の映画ですね。
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