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ロード・オブ・ザ・リングのbackpackerのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・ザ・リング(2001年製作の映画)
4.5
◾︎ロード・オブ・ザ・リング三部作第一章

【作品情報】
公開日   :2002年3月2日(日本)
作品時間  :178分
監督    :ピーター・ジャクソン
製作    :ピーター・ジャクソン、バリー・M・オズボーン、ティム・サンダース、フラン・ウォルシュ
脚本    :フラン・ウォルシュ、フィリパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン
原作    :J・R・R・トールキン
音楽    :ハワード・ショア
出演    :イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、ショーン・ビーン、オーランド・ブルーム、ケイト・ブランシェット、クリストファー・リー、ヒューゴ・ウィーヴィング、アンディ・サーキス、ほか

【作品概要】
J・R・R・トールキンの創り出した〈中つ国〉の物語のうち、一つの指輪を巡る壮大な叙事詩を描いた『指輪物語』を実写映画化した、三部作の第一章。
バージョンとして、劇場公開版に未公開シーンを約30分程追加したスペシャル・エクステンデッド・エディションが存在する。

監督は『バッド・テイスト』や『ブレインデッド』等のスプラッタホラーコメディ作品で知られる、ニュージーランドのカルト監督ピーター・ジャクソン(当時)。

撮影は監督の出身地ニュージーランドで行われたが、その雄大で豊かな自然の風景が醸し出す強力なリアリティが素晴らしく、本物の中つ国が目の前に現れたかのよう。
それもそのはず、本作は1997年のプリプロダクション段階から、コンセプトアートデザイナーやセット装飾の主任として『指輪物語』や『ホビットの冒険』等のトールキン作品の挿絵を手がけたアラン・リーとジョン・ハウの2人が参加しており、ビジュアルがファンのイメージと乖離しないよう徹底的な準備をしていたためである。

【作品感想】
「最も小さな者たちが、世界の未来を変えるのです」

「一度の撮影で三部作全てを撮ってしまい、もし第一章がコケてしまったら大変な借金を抱えてしまう」という、ピーター・ジャクソン監督一世一代の大博打となった本作。
配給のニューラインシネマも、それまでカルト映画等の小規模作品の配給会社だったため、失敗したら大変なことになること必至。

ですが!ピーター・ジャクソン監督は賭けに勝ちました!
徹底した準備に余念がなかったことの他にも、監督が以前設立したWETAデジタルというVFX映像スタジオで、群衆アニメーションソフト『MASSIVE』を開発して大合戦シーンを超リアルにしたり、モーションキャプチャーを発展させたりといった、作品のために技術をアップグレードすることに注力したのも、大成功の要因ですね。
もちろん、最新技術以外にも、矯正遠近法等のアナログな手法も余すことなく駆使し、同画面で背の低いホビットと背の高い他種族が会話する際に違和感を生じさせない(合成してるとかではないんです。詳しくはメイキング映像等ご参照ください)といった工夫が随所になされていたのも一因です。

本作の大ヒットにより、翌2002年に『二つの塔』、2003年に『王の帰還』が公開され、いずれもメガヒット。
本作はアカデミー賞13部門にノミネートされ、4部門で受賞していますが、以降もアカデミー賞の常連に。
これほど評価されたことは、逆に一つの功罪ともなりました。それは、ファンタジー作品の映像化における水準を、大幅にアップデートしてしまったこと。
『ロード・オブ・ザ・リング』(以下、LOTR)以前に作られた他のファンタジー作品の見方が(例えば、安っぽい作り(CGがしょぼい等)だなとか、エキストラが雑演技すぎるとか、脚本の練り込み・世界観の設定が甘いなとか……)多少なり変わると同時に、この先作られるファンタジー作品が『LOTR』に匹敵又はそれ以上の映像でなければ満足できない心境になってしまうわけです。
要するに、「わたし、『LOTR』並の映像じゃないと満足できない身体にさせられちゃったの……」ってことです。

そんなこんなで、まだ子供の頃にこんな超大作を見てしまったために、その後のファンタジー作品を見る目に多分に影響してしまったなと、今更ながらに実感します。
まあ、それ故に定期的に見返す作品の一つになり、とても満喫させていただいているわけですが。

今回、普段はエクステンデッド・エディションばかり鑑賞していたため、通常公開版に若干の新鮮さを覚えながら鑑賞でき、満足しております。
また、原作の歴史の流れに沿った鑑賞(『ホビット三部作』→『LOTR三部作』)も楽しいなと認識した次第です。

今後も、ゲーム作品やAmazonオリジナル映像化等、映像で紡がれる中つ国の世界は広がっていくでしょうし、可能な限り追いかけていきたいところです。
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