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肉弾のleylaのレビュー・感想・評価

肉弾(1968年製作の映画)
4.1
自身の体験を基にした岡本喜八監督のストレートな怒りのメッセージ。戦闘シーンを出さずに、戦争に挑む当時の日本国を痛烈に批判し、軍隊の愚かさを、滑稽に、アイロニカルに描いた作品。
ものすごい喜劇で、ものすごい悲劇。

なんじゃこのシュールな反戦映画は!と思いました。

終戦の日、海に漂流する魚雷にくくりつけられたドラム缶。その中にいるのは特攻隊員の“アイツ”(寺田農)。
1人、真っ裸で訓練を受ける愛すべきキャラ。

外出許可が出た日に女郎屋で女将をする少女(大谷直子)と出会い、恋をして、彼女を守るために死ぬと心に誓う。ネズミとウサギの儚い恋模様がみずみずしい。

砂丘で訓練をするアイツのところに次々と人がやってくるシーンは、まるで演劇のよう。

とことんアホで、とことん悲しいアイツの結末。

大真面目にふざけた表現をしていて、その奥に見える真実味と狂気。狂わなければ特攻隊などできないんだろうな。

昭和20年と昭和43年では男性の平均寿命が21.6歳も違うと語るオープニングから、シニカルなラストシーンへの展開が見事です。

寺田農ってこんなにすごい俳優だったんだ。18歳の大谷直子、仲代達矢のナレーション、区隊長に田中邦衛、笠智衆と北林谷栄の夫婦役など、豪華なキャストで見応えがありました。

映画会社が資金を出さず、自主制作とのこと。

題字が良いので誰だろうと調べたら、監督の幼稚園児の娘さんが描いたとか!✨😳
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