和桜

偉大なるアンバーソン家の人々の和桜のレビュー・感想・評価

4.3
『市民ケーン』と並び称したいほど大好きなオーソン・ウェルズ作品。映画会社によって無断で編集され、40分以上の短縮とラストの撮り変えの末に公開された。早すぎる不遇時代の幕開けであり、それでも評価され続けてるのがこの監督の偉大さでもある。後半なんてほぼぶつ切りなのに面白いから凄い。

名家の没落とドラ息子の悔恨を描きながら、20世紀初頭のモータリゼーションによる時代や街の変化が哀愁をもって伝わってくる。
衝撃なのは自動車の出現とそれに絡めた文明批判。ファッションの移り変わりとかも冒頭に描かれてて楽しい。70年以上前の映画が撮った、更に半世紀前の時代再現なので資料としても勉強になる。
様々な対比を重層的に仕込んだ物語や映像は圧巻で、上映時間の長さが活きてくる話だけに131分のオリジナル版の消失は本当に惜しい。それでも88分で物語をここまで重厚に語れるのかっていうのは驚かされる。

暴君のように振る舞い、街の人々からいつか報いを受けろと願い続けられた主人公の結末。ラストも差し替えられてるんで、本当はどうだったのかだけ知りたい。
ここで描かれているように誰の記憶からも消えてしまった名家や貴族は沢山いたんだろうな。
死後の世界では財産など無意味だと悟る少佐に対して、ヒステリックだけど根底に愛情があるファニー叔母さん、笑顔の下に強さを隠したヒロインの姿など女性陣の強さも際立ってる。
只ならぬ存在感を放ってるのがアンバーソン家の「家」であり、ある意味でもう1人の主人公なのかも。
冒頭から始まるナレーションの正体に気付いたときには思わず笑みがこぼれてしまう。
和桜

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