カタパルトスープレックス

風の中の子供のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

風の中の子供(1937年製作の映画)
4.1
清水宏監督が得意とした子供の強さと弱さを描いたジュブナイル映画です。

舞台は太平洋戦争に突入する直前の日本。私文書偽造の容疑で警察に連行された父親。一家の大黒柱を失った家族はバラバラになってしまう。叔父の家に引き取られた三平。しかし、三平は家の恋しさからいたずらばかりで帰されてしまう。母親は子供二人を養う目処は立たないのだが……という話です。

親に守られた存在の子供。独り立ちできない弱い存在。大人だって時代の波に飲み込まれてしまう。その影響を一番受けてしまうのが子供。しかし、子供は逞しく強い存在でもある。河童を探したり、タライで川に流されたり、高い木に登ったり。できる範囲で精一杯に反発する。

精一杯がんばるけど、どうしようもない。がんばって、がんばって、その緊張の糸が途切れた時、そりゃ泣いちゃうよ。

清水宏監督は演技をさせない演出が得意でしたが、この作品はそれがよく表れていますよね。それは子供が主役だから。それが自然な情景と相まって、清水宏監督ならではの絵になる。そして、構図の取り方が上手い。小津安二郎監督ほど極端ではないけど、ローアングル。そして襖や窓を間に置き、正面から捉えた奥行きのある構図。

あと、その時の世相や風俗を捉えるのが上手いんだよなあ。『有がたうさん』(1936年)では女歌舞伎一座が登場しましたが、本作では曲馬団(サーカス)が登場します。やはりサーカスが大好きで、多くの作品に取り入れてきたフェデリコ・フェリーニ監督に通じるものがありますよね。