安堵霊タラコフスキー

処刑の丘の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

処刑の丘(1976年製作の映画)
4.8
以前から気になっていたラリーサ・シェピチコの金熊賞受賞作、見てみたら思った以上に壮絶な作品でたまげた。

前半は第二次大戦中に小隊と別行動を取ることになった男二人の動向を描いているのだけど、長回しで主に描いたその様子は臨場感と芸術性を両立させたような味わいがあって(遠方にいる敵を射撃する箇所は特に素晴らしい)、この前半の展開だけで見た甲斐ありと思えた。

その後はそれまでの激しさと比べると落ち着いたシーンが続くから少し中弛みを覚えてしまったが、実はそれも嵐の前の静けさでラスト30分前から邦題にもなっている処刑のシーンへ移っていき、その様子は当然としてその後のシーンも見ているこっちが窒息しそうになるくらい圧倒的な代物で、あの主人公二人の対比的な運命は忘れ難いものとなった。


後に同じく第二次大戦中のロシアを描いた傑作を撮るエレム・クリモフと結婚するだけあって、この監督も金熊賞受賞も納得のタフな作品を撮ってのけたが、この後に一本も長編を撮ることなく事故死してしまったのはあまり惜しく、彼女が生きていたらどんな力作を撮っていたかと思うと残念でならない。