Junichi

復活の日のJunichiのレビュー・感想・評価

復活の日(1980年製作の映画)
4.4
「…復活されるべき世界は、大災厄と同様な世界であってはなるまい。とりわけ'"ねたみの神"、"憎しみと復讐の神"を復活させてはならないだろう。」

小松左京『復活の日』
(改版17版、角川文庫、437頁、1964,1975.)

【撮影】10
【演出】9
【脚本】8
【音楽】9
【思想】8

新型コロナウィルスと人類の闘い
2年近く経った現在
意義深い作品です

原作小説は1964年に刊行
1973年以後の世界が描かれています

1980年に公開されたこの角川映画
撮影時期は1970年代末
作中では1982年以後の世界が描かれます

2021年からみても
第二次世界大戦後の東西冷戦の世界が
ウィルスと人類の闘いにおいて
いかに無意味で害をなすかが分かります

バブル経済の絶頂期を迎えつつあった時期ゆえに可能になった日本のSF超大作
1980年代は『南極物語』や『敦煌』など
スケールの大きな日本映画が目白押しです

本作品もキャストが豪華で
ロケーションも世界的規模で
バブリーな映像です(南極、ワシントン、マチュピチュ遺跡etc.)

現在の常識からすると
ウィルスによる感染が拡大しているにも関わらず
病院で医師も看護師も患者もマスクをしていないなど
隔世の感があります

確かに当時
電車の中や病院の待合室、映画館でも
じゃんじゃか煙草を吸っていた記憶があります
灰皿がどこにでもあった印象です
マスクをする人も少なかったと思います

過去の過ち反省し
そこから学ぶ人類の力こそが
今回の新型コロナウィルスとの闘いを有利にしたことを実感します

原作小説では
中性子爆弾による放射能が
ウィルスに変異を起こし弱毒化することで
人類の再起の道が開けます
映画ではこのことが濁されています
原子力に対する繊細な内容なので
敢えて描かなかったのでしょう

小松左京氏が1964年に示した人類の希望のメッセージ
ポスト・コロナの世界で
我々が実践できるかが試されます

憎しみや復讐から寛容へ
価値転倒の必要を感じている全ての人にオススメします
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