垂直落下式サミング

子連れ狼 親の心子の心の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

子連れ狼 親の心子の心(1972年製作の映画)
3.2
子連れ狼シリーズ四作目。
冒頭、乳首を両手でまさぐる金太郎の刺青が入った女の乳房のアップからはじまる。着物の上をはだけさせたその女が、複数人の刺客たちを小太刀で斬り倒し、表の金太郎と背の妖婆の刺青を相手の血に染めていく。美人でスタイル抜群だ。そして強い。
本作のストーリーは、今までのシリーズとは趣を変えて、序盤はこの女、お雪の復讐を止めるために、子連れ狼が彼女を殺そうとするはなしとなっている。拝一刀が金で雇われ、自分と同じように復讐を果たそうとする彼女を討たんとするのである。
お馴染みのフォーメーションを組む刺客たちも、2~3人では返り討ちにされることに気が付いたようで、五人組に増員。しかも、今回はひと味違う!彼等は仲間を見捨てない!先輩たちの役立たずっぷりを伝え聞いた彼等は、犠牲は前提で命を投げ出す捨て石戦法を改めて、チームプレーの精神を学んだのだ!まあ、仕掛けるタイミングが悪すぎるので、きりもみジャンプを披露した一刀に事も無げにジェノサイドされるまでが様式美である。
それにしても、映像に極端な陰影やサイケなギラつきがなく、画面の色合いはテレビドラマっぽく、説明的なナレーションも多く、大五郎が「ちゃん!」と言い過ぎるし、編集が嫌に辿々しくなっている。親しみやすいのと過激さが無くなったのとで秤にかけると、残念ながらこのシリーズらしさが大幅に減退していると言わざるを得ない。正直、前半分は単にこれからおこることを示唆していくだけなので、物語が停滞していて、かなりかったるい。
個人的にシリーズのなかで一番つまらなかったが、時代劇らしいオーソドックスな表現に回帰したともいえるし、待ちに待った柳生烈堂との直接対決が描かれるわけで、いちいちこれまでの経緯を回想してくれるというのも、初心者がここからみても大丈夫な親切設計ではある。
見所は、シリーズのアイコンミュージックである「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」が流れること。
「ててごと、ははごと、ごとごとと」もそうだが、小池一夫作詞の時代を先取りしたアニソン的なセンスが光る。