トゥーン

紀子の食卓のトゥーンのネタバレレビュー・内容・結末

紀子の食卓(2005年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

『自殺サークル』で問うた「あなたはあなたの関係者ですか」について、さらに考察を進めていった作品。『自殺サークル』の解説編という位置づけでもある。あれに出てくるよく分からないアイテムの数々は、抽象的な事柄を表していた。
本作ではレンタル家族をテーマに、2週間で撮影された。自主制作映画のような大胆なカット割りが多いが、脚本がしっかりしている分、十分見れる。エンタメ性は薄く、尺の長さを感じるが、問題意識やテーマ性が非常に面白い。
本来の自分と役割を演じている自分。家族というものが家父長制から変わってきた現代において、家族における役割が明確化されにくい。会社でも本来の自分を出せずに、偽って役割を演じている。
そのため、ネットなど別の場所に本来の自分を求めるが、そこでの役割はなんだろうか。役割がなければ、自己の存在意義が果たせない。だから、役割を必要とするが、そこは虚構が入り混じっている。それならば一層、虚構に突き進めばよいではないか。
その役割の一部に自殺があり、その役割を与えられた人間は死ぬことで自分があったという自己認識が出来る。弱肉強食のようにサークルが出来ている。
しかし、他者を演じることでの役割を放棄し、自分の新たな役割、決して楽ではない道に行くことも出来る。
現代にも通づる問題意識が浮かび上がる本作。平等が謳われ、ますます簡単な役割が消えかかる今だからこそ、考える必要がある。
それではみなさんさようなら。
トゥーン

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