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東京物語のichitaのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
2度目の鑑賞です。

1度目は杉村春子演じる長女に嫌悪感を抱いた記憶がありますね。

歳を経て、その長女に共感してしまった自分がいる。
生活のペースを乱され「困っちゃうなぁ!」を連発の長女。あそこまでズケズケ言わないにしても内心はあんな感じになりますよ、きっと。

そして杉村春子と笠智衆の年齢が一つ違いという驚き。老け役の一言では済まない、年齢を重ねたゆえの頑固さや達観した佇まいをも醸し出す笠智衆が素晴らしい。

美しい原節子演じる義理の娘の心根の美しさと終盤の告白がしみじみと沁み入る。
「ええ人じゃ」。

いつか老親に共感する日が来るんだろうな。いや、ちょっと来てる。

それぞれの世代を生きるこの家族を滋味深く描いた作品がこれほど長く愛されている理由がやっと理解できたような。
いや、あの時の理解はまだまだだったと感じる予感もありつつ、それを心待ちにする私でもあります。


団扇が大活躍の夏の風景。
日本の夏は団扇では立ちうちできなくなってしまいましたね。
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