まぐ

東京物語のまぐのネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

なるほど、名作でした。
変化を恐れる者と変化していく者のコントラストを変わらない者の視線から切り取った、どうしようもなく悲しい人間ドラマ。

紀子が老夫婦に優しくしたのは、老夫婦と触れ合う事で戦死した夫と繋がりを持てるから、つまり変化を恐れる紀子自身のためだったんですね。切ない…しかも、この映画自体の結論が変化を肯定していることが何よりも切ない…

にしても本当に小津監督は微細な意図を再現するのがうまいです。息子や娘たちも、親に対して愛情が無いわけではないが、邪魔に思っている。こんな難しい心境を、よくあそこまで形にできるなぁ、と感心しっぱなしでした。

老夫婦2人の演技も素晴らしかったです。終始ニコニコしているけれど娘や息子の本心を察知している、見ていて常に胸が痛むような演技でした。

そして終盤になるまで全く出てこない京子。なんだ?と思っていたら、最後の最後、紀子との会話で見事に観客を代弁してくれました。観客が積み上げてきた小さな違和感を一気に表面化するあのシーンで涙腺崩壊した人は多いのでは。自分もその1人です。

また、三本見てきてようやく小津作品の独特な演出に慣れてきましたが、特に独特なな会話の演出が段々好きになってきました。というのも、他の映画では会話のシーンがここまで印象に残ることが無いんですよね。会話が始まるとすぐにわかるから、会話を聞く準備もできますし。カメラが固定で割とフラットな画作りなのも何か理由があるのかも、と考えながら次の作品も見ていきたいです。
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