マッシュ

東京物語のマッシュのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.3
小津安二郎作品の代表作。
1950年代の作品。尾道に住む老夫婦が、独立して東京に居を構える子供達を訪ねて東京へ旅行する話。
60年前に作られたとは思えないほどよい出来だった。
まず役者陣が醸しだす雰囲気が素晴らしい。田舎のゆっくりした時間の流れを見事に表現し、その場を経験していないのになぜか懐かしい雰囲気になる。また笠智衆の素朴な演技や原節子の美しさなど現代映画とは比べ物にならないくらい素晴らしい。また小津安二郎が拘りぬいたという構図の素晴らしさも目を引いた。写真にもなりそうな遠近感を活かした構図は、物語の要所要所で的確に使用され、場面の切り替えを見事に演出している。

ストーリーは、両親と独立した息子達との微妙な心情の食い違いを描いて進んでいく。
多くは語らず子供の言う事を受け止める両親。しかし心の何処かでもっとこうしてほしいと言う欲もある。一方で、両親の事は大事に思うが、居続けられると少々厄介だと言う子供達。自分たちの生活や出費もかさむのであまり迷惑をかけないで欲しいと思っている。
そこに、戦死した次男の嫁である紀子(原節子)が登場する。紀子はかれこれ8年程、洋裁工場で働いておりひとり暮らしをしている。話が結末に向かうにつれ、実の子供よりも他人の紀子のほうがよっぽど両親を大事にしてくれるという事がわかってくる。また、紀子自身はそれを偽善のようにも感じ、自己嫌悪を抱いていた。物語のラストでは、紀子が父親に「私はずるい人だ」と胸の内を吐き出すが、父親はそれを理解した上で「いい人を早く見つけなさい」とアドバイスをする。
この種の映画は特にハッピーエンドで安易に片付けるのではなく、見た人それぞれの心に何かを訴えかけるチカラがある。私の場合も親は離れて暮らしているので、親孝行はなるべく早くしておかないと後悔すると再認識させられた。
また世間では今も昔も嫁姑問題など下世話なドラマがたくさんあるが、そんなつまらない事を考えずに相手を思いやる気持ちを持って欲しい、と思った。親としては子供に過度な期待はしない、求めない。子供も親に甘えてばかりいないで独立して生計を立てる。その上で親を大事にする。こう言った当たり前の事がなぜ出来ないのか。60年前も今も変わらずに親不孝者は存在するし、ダメ親も存在する。やはり、「今の若いものは…」という人を信用してはいけないと思った。
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