ヨツ

東京物語のヨツのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.1
世界の小津はすごい。
母親が小津監督の映画が好きで、ずっとおすすめされてはいたものの、自分が生まれる前、どころか親すらも生まれてない時代の映画の良さが果たして私にわかるのか?という疑問や不安からずっと鑑賞を避けていた。が、今回尾道に旅行に行くのに先駆けて鑑賞。杞憂だった。

私は電報を打ったことないし、尾道には汽車では行かないし、68歳の死を大往生とは呼ばない。身の回りの環境が全くと言っていいほど違うのに、リアルな質感を伴って迫ってくる心情の描写に胸がしめつけられる。家族とは、親子とは、老いていくとは、と考えを巡らさずにはいられない一本。あらゆることが仕方ないことで、自分たちは比較的幸福である、と解っている老夫婦は聡明であり、その聡明さ故に生まれる作品の根底に漂うもの悲しさみたいなものが作品を魅力的にしていると思う。家族の在り方は変わっても、そこに存在する悩みややり切れなさ、遣る瀬無さは根本的には同じものなのかもと感じさせられる。時代を超える名作。
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