いわゆる「紀子」三部作の最後をしめくくる小津安二郎の代表作。
日本から失われつつあった家族の絆というものを、淡々とした淡々とえがいた傑作。
戦前の『戸田家の兄妹』と構造をおなじくするが、年老いた親を救うのが肉親ではないというのがおおきくことなっている。
最後に家族としてささえてくれるのは、けっして血のつながりではないのだというこの事実は、戦争によってある種の「断絶」を経験した日本人にとって、絶望だけではなくあらたなる希望でもあるだろう。
少子化・人口減少社会をむかえたわたしたちにも他人事ではない問題だ。
どこを切り取っても美しい一枚の絵になりうるという、小津安二郎の構図のうまさを堪能できる一本。
ドラマとしての内容ならほかに傑作もあるが、映像としての完成度はやはり群を抜いている。