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東京物語のmatchypotterのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.0
松竹繋がりでピンポイントのクラシック、小津映画。名作中の名作とされる作品。

1953年、戦後間もない日本が再び敗戦から立ち上がろうとしていた頃の映画。

なんだろう、これと言ったとんでもない事件があるわけではない。
観て思い浮かんだ言葉は“日常”。

広島の尾道から東京の子供達に会いに来た親の“日常”。
尾道から親がやってきて、その面倒を見たり見なかったり見れたり見れなかったりする東京の喧騒に揉まれる子供世代の“日常”。
東京と広島それぞれの土地に息づくリズムと“日常”。
兄弟の中の役割とそれぞれの“日常”から生まれてくる個性。

義理の娘にあたるのりこが親や兄弟の橋渡しとなり、彼女を通してその様々な“日常”のわずかな差を映し出す。
何とも言えない日本ならではの優しさと、厳しさと、遠慮と、本音がほんのり滲み出てくる。

この何が起きても、何かは感じていながらあっけらかんとしているお父さん。
主張をしているようで我を通しているわけでもなく、でも色々父として、夫として妻と子供に気を遣いながら、この決して裕福ではない家族と日本の中で幸せを祈る優しく微笑むお父さん。たまにハメを外したりするお茶目なお父さん。

お父さんの最後にのりこにかける「東京でも子供達よりあんたの方がようけしてくれたわ。」と「そうか、もういかんかぁ、、、そうかぁいかんかぁ」が忘れられない。

日本のうつろいと日常がゆっくりと、でも確実に変化を遂げている、そんな蒸し暑い尾道と東京。
そんな父と母の上京物語。

初めて観たけど、136分と長いんだけど、白黒だろうと、蒸し暑い季節感や、古き良き日本の文化と今と変わらない家族の、親子の関係が、時代が変わっても変わらない温かいような、少し歯がゆい物語がここにある。

「ありがぁと。」

ホント、何かあってからではなく、何でもない時に色々やっておくべきだわ。
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