ドント

夜の第三部分のドントのレビュー・感想・評価

夜の第三部分(1972年製作の映画)
3.5
 1972年。ナチス占領下のポーランド。レジスタンス活動、治験、血、死、そっくりな者、妻と子、親子、繰り広げられるひとりの男の苦悩と彷徨、その果ての絶望を描く。
 冒頭の、黙示録の朗読と共にはじまる一連のシークエンスが個人的には面白さのピークで、あとは歴史の重さや観念的なあれこれが足枷となってハネきらないといった感想を持った。ズラウスキーは3本目だけどいつも「これはいいなぁ。でもなんか惜しいなぁ」「もうちょびっと、パワーがあればなぁ」と思ってしまう。
 冒頭以降も、ナチスにおっかけられるシーン(車の先が出る所とか最高よ)や堂々と現在に侵入してくる妻子の記憶や霊体などあっ、いいなぁと感じる部分は多々ある。でも魔力というか、ワンダーというか……言葉にしづらいサムシングが全体の75%で一味足りない。なんなんだろうなぁ。不思議だ。たぶんズラウスキーさん、頭がよすぎるのではないかと想像している。勝手に。
 とは言え暗鬱さや出口のなさは十全に表れており、冷たい色彩や死人のような街は最後まで魅せてくれる。広々と、がらんとして寒々しい映像が続くからこそ、シラミのウジャウジャ、蝟集っぷり、血の赤が引き立つ。でもやっぱり冒頭がいいんだなぁ。この悪夢みたいな場面はステキすぎて、何度も見返したい。
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